Critical thinkingとcritical pedagogyの違いに関するBurbules and Berk (1999)の論文を読みました。

少し前にクリティカルシンキング(critical thinking)について少し書きましたが(詳しくはこちら)、今回はクリティカルシンキングとクリティカルペダゴジー(批判的教育)の違いに関する以下の本のチャプターを読みました。

ちなみにクリティカルペダゴジーはフランクフルト学派の批判理論(critical theory)に端を発するもので、教育の分野ではブラジルの教育者フレイレ(Freire)に大きく影響を受けています。

  • Nicholas C. Burbules and Rupert Berk (1999) Critical Thinking and Critical Pedagogy: Relations, Differences, and Limits. in Critical Theories in Education, edited by Thomas S. Popkewitz and Lynn Fendler. NY: Routledge.(現在はウェブでも公開されています。詳しくはこちら

このチャプターによると、クリティカルシンキングは合理的・論理的に考えるスキル・態度を育むという「スキル」「個人レベル」という色合いが強いですが、クリティカルペダゴジーは逆に、学習を通して社会の不平等を是正するなど、学習を通した「行動」「社会変化」に重きがおかれるらしいです。

この前調べた限りだと(詳しくはこちら)、広義のクリティカルシンキングでは社会変化のための行動もその要素が入れられることもあるようでしたが、全体的には上記のような理解をされることが多いように思います。

クリティカルシンキングの批判としては、個人のスキルに重きが置かれているため、学習を通じた社会的責任については軽視されがちなこと、クリティカルペダゴジーの批判としては「不平等を正す」などの正義感に基づくものだが、自らのいう「正しさ」や「真実」についても批判が必要なのではなどがあるそうです。

また、この両方がフェミニスト、多文化主義者、ポストモダニズム等から、こういったクリティカルという概念も(普遍的なものではなく)歴史的・社会的なものであるとの批判も受けているようです。