学術論文の査読プロセスについて

この前の記事で、学術論文では査読の有無でその評価が随分変わると記載しました。
今回はその査読の具体的なプロセスについて自分の経験を基に記載します。

①学術誌(journal)に論文を提出する。

まず論文を書いてから、その論文に合う学術誌を選ぶ方法と、掲載したい学術誌を先に選び、その趣旨にあった論文を執筆するという両方があると思います。私は提出する学術誌を選ぶときは、編集委員会(editorial board)の顔ぶれ(自分が論文で引用している研究者が編集委員をしている学術誌に出すなど)や過去の掲載論文(似た様なトピックがあるかなど)を見て選ぶようにしています。

②査読結果が届く

学術誌に論文を提出すると、3か月程(遅いときは6か月以上かかることもあります・・・)で、匿名の査読者(通常は2名)のコメントが届きます。これには基本的に大きく分けて4つの種類があります。

a. 受諾(accepted)
訂正もなく、そのまま受諾されるというものです。これになったことは1度しかありません。(自分一人の論文ではなく、その筋に詳しい先生との共著でした・・。)文句なしで受諾という選択肢は基本的には非常にまれだと考えています(少なくとも私の場合)。

b. 訂正の上、受諾(accepted with minor revisions)
掲載はされますが、その前にいくつか(多いときはいくつもの)訂正を求められます。この場合、査読者のコメントに沿って、自分の論文を直していかなければなりません。2ヶ月~4ヶ月ぐらいの訂正期間を与えられるので、その間に書き直すことになります。

c. 書き直しの上、再査読(review with major revisions)
拒否されたわけではないですが、大幅な書き直しを求められます。この時点で掲載が認められたわけではなく、書き直しの後に再査読のプロセスを経ることになります。私の経験ではこの場合はだいたい6か月ぐらいの訂正期間を与えられます。論文自体の構造を変えたり、新しく文献を読んだりしなければならなくなるので、結構時間がかかります。

d. 拒否(rejection)
査読の上拒否される場合と、査読前に拒否される場合があります。
査読前に拒否されたケースというのは、学術誌の扱う範囲に、自分の論文のトピックが含まれていないという理由のものです。この場合は、提出後、比較的早く返事がきます。

査読の上、拒否されることもあります。拒否された場合は、別の学術誌にその論文を提出することもできます(ただ、一度拒否された旨を記載しなければならないこともあります)。

基本的に査読者はその分野に詳しい研究者なので、コメントは的確で、大変役に立つことが多いです(基本は匿名なので誰なのか分からないですが・・・)。査読者のコメントに納得がいかない場合は面倒ですが、そこらへんはうまく折り合いを見つけるか、そのジャーナルでの掲載をあきらめるしかないのかなと思います。拒否された場合も、査読があった場合はフィードバックをもらえるので大変助かります。

③出版社とのやり取りを経て掲載

受諾された後は、基本的に論文の内容以外の部分の訂正(タイプミスなど)や、フォーマットなどを確認し、契約書にサインをした上で(これは掲載する学術誌にもよります)、晴れて掲載されることになります。

ちなみに、(有料の)学術誌に掲載されたからといって、執筆者にお金が入ってくることはまずありません。

 

この筋のハウツー本はたくさんあるみたいですね↓

  • Thomson, Pat, and Barbara Kamler. Writing for peer reviewed journals: Strategies for getting published. Routledge, 2012.