日本における英語の状況に関するSeargeant(編)の本(2014)を読んでいます。

以下の本を読んでいます。
  • Seargeant, Philip (ed). English in Japan in the Era of Globalization. Palgrave Macmillan, 2011.

日本における英語という題で2部構成になっています。第1部は教育制度における英語というテーマで5本の論文が、第2部は、社会・文化における英語というテーマで4本の論文が収録されています。

昨日は第1部に収録された5本の論文を読んでみました。概要は以下のとおりです。

第一章のYamagami & Tollefsonの論文は、van Dijkの批判的談話分析を使って、英語での授業を提供する日本の複数の大学の宣伝資料と、国会のスピーチ等を分析していました。分析を通して、グローバライゼーションをチャンス(opportunity)とみなす言説と、脅威(threat)とみなす言説が存在するといっていました。他の国(シンガポールやフィリピンなど)の状況にも触れていたのが興味深かったです。

第二章のMatsudaの論文は、日本の高校での教師と学生の英語に対する考え方などをインタビューやアンケート、クラス観察を通して考察していました。教師と学生では英語を学ぶ目標や英語に対する意識にずれがあることを指摘し、クラス活動、言語教育、World Englishes研究の視点から議論していました。

第三章のStewart and Miyaharaの論文は、ナラティブ・アプローチを使って、日本の某大学の中の英語で授業を行うプログラムにおける教師・学生のアイデンティティについて調査していました。

第四章のBreckenridge & Erlingは、JETプログラムでALTとして日本の学校に派遣される英語母語話者教師にインタビューを行っていました。なかなか英語の授業に主体的に参加できなかったり、「他者」として扱われたりするなどといった問題を指摘していました。私もALTの知り合いが数人いますが、同じようなことを言っている人がほとんどだったので、納得できるデータでした。

第五章のKubotaは、自らが日本で行ったフィールドワークでの経験を基に、「グローバルなリンガフランカとしての英語」に疑問を呈していました。

第2部は読んでいませんが、今までのところ、全体的に非常に限定的なデータの分析を通した、質的研究が多いように思いました。このテーマで研究する場合は、今回の論文でもあったような、インタビュー分析やディスコース分析研究が比較的実施しやすいのかなと思いますが、他にはどういう手法・分析方法がありうるのかなと思いました。