grammatical metaphor(文法的メタファー)についてのメモ

この前紹介したHallidayの話し言葉と書き言葉に関する論文(詳しくはこちら)に出てきていたgrammatical metaphor(文法的メタファー)について、曖昧なところが多かったので、メモしておきます。参考にしたのは、以下の論文です。

  • Taverniers, Miriam. 2003. “Grammatical metaphor in SFL: A historiography of the introduction and initial study of the term”. In Simon-Vandenbergen, Anne-Marie; Miriam Taverniers & Louise Ravelli (eds.) Grammatical Metaphor: Views from systemic functional linguistics. (Current Issues in Linguistic Theory, 236.) Amsterdam: Benjamins, 5-33.

メタファー(隠喩)というと、「時は金なり」や「2人は別の道を行く」のように抽象的な「時間」や「関係」を具体的な「金」や「道」に置き換えていうことを指す場合が多いと思いますが(詳しくはこちら)、grammatical metaphor(文法的メタファー)は語彙のメタファーとは異なるものです。

文法的メタファーはHalliday(1985)が提唱したもので、だいぶ大雑把にいってしまうと、同じ内容のことを、違う文法表現を使っていうことのようです。文法表現を変える際に語彙も少々変わることもあります。文法的メタファーは大きく分けて観念的(ideational)文法的メタファーと対人的(interpersonal)文法的メタファーにわかれます。

観念的文法的メタファーだと、「Mary saw something wonderful」(Halliday 1985, p. 322)という、誰が何をしたかストレートに分かる文(Halliday の言葉だと「congruent」な文)に対して、「A wonderful sight met Mary’s eyes」や「Mary came upon a wonderful sight」など、同じ内容ではありますが、違う文法表現を使ったちょっとこねくり回した(?)言い回しがメタファーになります。

英語の動詞の名詞化も文法的メタファーの例だそうです。全般的に書き言葉は文法的メタファーの度合が高くなるようです。

対人的(interpersonal)文法的メタファーは、相手に対して働きかけるときの言い方で、例えば直接的な表現「don’t」に対し、メタファー的な表現は「I wouldn’t …. if I were you.」などといったものが挙げられます。
どの文がメタファーでない文か分かりにくい場合もあるようですが、文法的メタファーという概念を使うことで、同じ内容の文の違う言い方を探ることができるので、リテラシーの向上などでも用いられることが多いようです。