Döpke(1992)のone-parent-one-language approachについての備忘録

Döpkeは、子どものバイリンガル教育で名前はよく聞く研究者です。

彼女は、以下の本で、「one parent one language」の原則で子どもを育てる、オーストラリアの英語・ドイツ語のバイリンガル家庭を分析しています。

  • Döpke, Susanne. One parent one language: An interactional approach. Vol. 3. John Benjamins Publishing, 1992.

「one parent one language」とは、例えば父親が英語母語話者、母親が日本語母語話者だと、父親は英語、母は日本語で子どもに話しかけるというように、基本的には親が自分の母語で子どもとコミュニケーションをとるというものです。ちなみに、日本で生活している日英のバイリンガル家庭だとすると、英語がマイノリティ言語、日本語がマジョリティ言語になります。

この本では、この「one parent one language」の原則をとっている、オーストラリアで生活する英独のバイリンガル家庭6つで、英語・ドイツ語のどちらの言語でも話せるようになっている子どもと、マイノリティ言語であるドイツ語が弱くなってしまう子どもを比べ、どういった要因が言語発達に関連するのかを調べています。

インプット(言語の接触)の質や量など、様々な要因を挙げていますが、一つの要因として、マイノリティ言語を話す親がどのくらい「one parent one language」の原則を徹底しているかという点を挙げていました(p.63-p.70)。子どもがマジョリティ言語を話すと「わからない」「翻訳してくれ」などというなどして強くマイノリティ言語を話すように促していた場合は、マイノリティ言語での産出能力が高くなっていたという結果が出ているようです。

普通に過ごすと、子どもはどうしてもマジョリティ言語のほうが強くなってしまうので、マイノリティ言語を伸ばすために無理やりでもマイノリティ言語を話させるような環境をつくらなければ、産出能力も高いバイリンガルを育てるのはなかなか難しいということなのかなと思います。