言語教育における文学(literature)に関するSchultz (2001)を読みました。

カリフォルニア大学サンタバーバラ校でフランス語教育を担当しているJean Marie Schultzの以下の論文を読みました。

言語教育における文学の役割に関する論文でした。

  • Jean Marie Schultz. “The Gordian Knot: Language, Literature, and Critical Thinking.” SLA and the Literature Classroom: Fostering Dialogues. Eds. Virginia M. Scott & Holly Tucker. Boston, MA: Heinle & Heinle, 2001.

(ちなみにタイトルのGordian Knot(ゴルディオスの結び目)は「難問」という意味です。)

以下の本に収録されています。

  • Scott, Virginia M., and Holly Tucker. SLA and the Literature Classroom: Fostering Dialogues. Issues in Language Program Direction: A Series of Annual Volumes. Heinle & Heinle, A Division of Thomas Learning, Inc., 25 Thompson Place, Boston, MA 02210, 2001.

言語教育においては、コミュニカティブ・アプローチなどの影響で、会話に重点が置かれるようになり、文学はあまり扱われなくなっていたのですが、最近は多少再評価の動きがあるようです。

といっても、Schultzによると、以前の言語教育での文学の扱われ方というのは、文法や語彙を確認するためのものであったり、書いてある内容を把握するというものだったようです。

現在の再評価の動きでは、同じテキストでも読み手によって多数の解釈の仕方があり、読み手自身がテキストの意味の作り手となるとも言われ、個々の読み手の解釈も重視していて、従前の文学の扱われ方とは趣を異にするようです。その背景にはロラン・バルトの記号論やWolfgang Iserなどのreader-response theory(読者反応理論)などの影響があると言っていました。

こういった読み手がテキストを解釈し、再構築していくプロセスはクリティカル・シンキングにも共通するところがあるとSchultzは言っていました。

後半部分では、実際にどう文学を言語教育で扱うかといった具体例も提示していました。