Byrnes (2012)の高等教育の外国語教育における枠組み・目標に関する論文を読みました。

Heidi Byrnesの主に米国の高等教育の外国語教育における枠組み・目標に関する論文を読みました。
前の記事でも書きましたが(詳しくはこちら)、Byrnesはリテラシー習得などを中心に研究しています。

  • Byrnes, Heidi. Advanced language learning: The contribution of Halliday and Vygotsky. A&C Black, 2009.

外国語教育の方針を決める枠組みとして、米国では以下の3つの枠組みがあります。

  1. ACTFL(全米外国語教育協会)のOPI(oral proficiency interview)基準に基づいたProficiency framework(1980年代)
  2. Standards(1990年代)
  3. MLA(Modern Language Association)の報告書(2007年)

日本でいうと、国際交流基金のJFスタンダード(詳しくはこちら)、欧州では欧州言語共通参照枠(CEFR)(詳しくはこちら)にあたるものかなと思います。

Byrnesによると、こういった枠組みは、高等教育でよく目標とされる複言語でのリテラシーの向上とはミスマッチがある場合が多いといっています。また、こういった枠組みは影響力があるのですが、その枠組みにこだわると、枠組みにカバーされない能力や言語分野等がおざなりになってしまうおそれもあると指摘していました。

特に①と②の枠組みはCommunicative Language Teaching(CLT)というコミュニケーション能力(特に話し言葉)の向上に基づくもので、小中高校には影響を与えたものの、高等教育ではその影響は限定的であったといっています。

2007年に発表された③は、この前の記事でも少し述べましたが(詳しくはこちら)、高等教育の外国語教育の目的とは、”translingual and transcultural competence”の育成といっていて、目標言語におけるコミュニケーション能力向上に焦点を当てた上記の①、②とは趣を異にしています。ただ、実際の実施にあたっては特に初級クラス等で課題があるようです。

Byrnesはsystemic functional linguistics(選択体系機能言語学)(SFL)に大きな影響を受けているので(詳しくはこちら)、SFLの学者の論文を引用しながら、高等教育の外国語教育おける目標等についても議論していました。