Doerr & Lee (2013)の北米の継承語コースについて調査した本を読んでいます②

昨日の記事の続きです。

  • Doerr, Neriko, and Kiri Lee. Constructing the heritage language learner: Knowledge, power and new subjectivities. Vol. 103. Walter de Gruyter, 2013.

第6章では、「継承語教育」のコースとして設置されたJackson Courseを受講した(しなかった)生徒5人のケースを、生徒・親両方のインタビューなどを通して調査していました。

面白かったのが、そもそも「継承語教育」のコースとしてJackson Courseが設置されたものの、学生・親の中にはそれを補習校部についていけなかった学生がいくような簡単な国語のコース(lower-track kokugo course)と考える人もいたということです。

ただ、Jackson Courseで学ぶ中で、Jackson Courseが補習校部についていけなかった人のためのものではなく、内容について適宜英語など交えながら深く学ぶなどして、国語教育ではない方法で日本語を学ぶクラスだと捉えなおす学生もいたようです。(p. 105-108)

 

第7章では、継承語の学習動機の変化などについて3名の永住者(日本に居住する予定のない学生)ケースを使って調査していました。

3人とも、当初、この語学学校の幼稚園に入園した際は、日本の親戚とコミュニケーションができるようにと入学したようです。

ただ、小学校高学年から中学校にかけて、学習動機は、アメリカ社会で日本人であること、日英のバイリンガルであることなど、自身のアイデンティティ(原文では「sense of self」という言葉を使っていました(p. 134))のためと変化していったようです。

さらには、高校まで続けた場合は、日本語能力がアメリカの社会で生活する上で、また自分の将来のキャリアを考える上でプラスに働くからという学習動機に変わっていったと述べていました。