Larsen-FreemanのComplexity Theoryについて②:教育的示唆

Complexity theoryの教育的示唆

前回の記事で紹介した動画では、Complexity Theoryをもとに、現在の言語教育について以下のような疑問を投げかけていました。

 

①「Acquisition(習得)」は正しい言葉?

「Acquisition(習得)」は正しい言葉なのか。「発展(development)」のほうがいいのではという疑問を投げかけています。

これについてはこの前の記事と重複するので割愛します。

詳しくは以下の記事をご覧ください。

 

②インプットからアウトプットに変換することでないなら学習とは何なのか?

言語教育では、学習者が見聞きする言語のことを「インプット(input)」、学習者が産出する言語(話す・書く)を「アウトプット(output)」と呼び、言語学習を、学習者がインプットを受け、これを処理し、アウトプットとして産出するというふうにとらえることが多いです。

ただ、これだと、学習者は言語を処理するコンピューターのようで、学習者の主体性がおざなりになってしまうとLarsen-Freemanは指摘します。

Complexity theoryでは、上記の「インプット–>学習者の頭で処理–>アウトプット」のモデルに代わるものとして、人々のインタラクション(関わり合い、交流、相互作用)に注目します。

前回も書きましたが、人々が関わり合う中で何が起きているのか、一つ一つの文脈を見ることでどういう現象が生じているのかつぶさに観察します。インプットの代わりとなる概念としてアフォーダンス(affordance)(詳しくはこちら)という考え方も紹介していました。

 

③誤用とイノベーションの違い?

言語は固まったものではないので、誤用とイノベーションと分けるのは簡単ではないといっていました。

たとえば、英語では「data」は複数ですが、多くの人が「this data」というように単数でも使っているとLarsen-Freemanは指摘していました。

このように言語は変わっていくもので、誰が「誤用」を決めるのかというのもなかなか難しい問題だと指摘します。

 

 

④なぜ学習者はクラスでできたことも、クラス外ではできなくなるのか。

言語学習でよくあるのは、クラス内ではできるけど、クラスの外で学んだことを使えないという問題です。

これについてはgrammaringという彼女の考えを紹介していました。これについても前紹介したので割愛します。詳しくは以下をご覧ください。

 

興味のある方は

Complexity Theoryについては以下のような書籍があります。

  • Larsen-Freeman, Diane, and Lynne Cameron. Complex systems and applied linguistics. Oxford University Press, 2008.