第二言語学習理論と教授法⑥:用法基盤学習(usage-based learning)・競合モデル(competition model)

参考本

この前からの続きです。この本の第4章を読みました。以下の記載も主にp. 110-113を参考にしています(多少加筆しています)。

  • Lightbown, Patsy M., and Nina Spada. How Languages are Learned 4th edition. Oxford University Press, 2013.

↑この本は外国語教授法などのクラスでよく教科書として使われています。

和訳版もあります。

  • Lightbown, Patsy M., et al. 『言語はどのように学ばれるか』 白井恭弘 , 岡田雅子訳 , 東京:岩波書店

前の記事で紹介した情報処理アプローチの他、認知心理学を基に以下のようなモデルも提示されています。

Usage-based learning(用法基盤学習)

Usage-based learningはことばのとおり、言語使用に基づく学習に着目したアプローチで、インプットの頻度に重きをおいています。このアプローチだと、言語学習とは、それぞれの文法・語彙の意味を学ぶだけでなく、その文法・語彙がどのような文法・語彙と共起するのか、どういうコンテクストで使われるのかも学んでいくと言われています。

Usage-based learningについては以下に詳しく書かれているようです。

  • Robinson, Peter, and Nick C. Ellis, eds. Handbook of cognitive linguistics and second language acquisition. Routledge, 2008.

 

用法基盤モデル(Usage-based model)について

↑詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。

 

Competition model(競合モデル)

Bates and MacWhinney(1982)が提案したモデルです。

このモデルによると、インプットを多く受けることにより、学習者は、言語機能を表すための「cue(手がかり)」を学んでいくそうです。

例えば、

  • The boy eats the apple

という文をみてみます。

このとき、the boy が主語(動作主)、the appleは目的語というのを自然に理解すると思います。これは「語順」という「cue」を我々が知っているからです。

この「cue」というのは言語により異なるそうです。

日本語だと上記の文は

  • 少年がりんごを食べた。

になります。このとき、主語が少年、目的語がりんごがわかるのは、語順だからではありません。(「りんごを少年が食べた」ということもできます)

日本語の場合は、「が」や「を」などの助詞が「cue」になっています。

言語と脳

認知心理学に関連して、言語と脳の萌芽的研究もおこなわれています。

言語機能は左脳が司ると言われていましたが、最近の研究では言語を処理するときには、右脳・左脳両方が使われているということがわかっているそうです。(ただ、言語レベルや年齢によって、使われる場所が異なっているという研究もあるそうです。)

 

その他の記事

他の記事もよければご覧ください。