言語喪失に関するSchmid (2016)の講演を視聴しました。

言語習得とともに、言語喪失(language attrition)というのも応用言語学で研究されている分野ですが、今回はその言語喪失に関するSchmidの講演を視聴しました。

  • Once a native, always a native? Language attrition and constraints on bilingual development (Monika S. Schmid, University of Essex) May 6, 2016, Birkbeck College, London.

動画のリンクはこちら(アクセス日:2016年8月8日)
Schmidは以下の本の著者・編者もしているようです。

  • Köpke, Barbara, Monika S. Schmid, Merel Keijzer, and Susan Dostert, eds. Language attrition: Theoretical perspectives. Vol. 33. John Benjamins Publishing, 2007.
  • Schmid, Monika S. First language attrition, use and maintenance: The case of German Jews in Anglophone countries. Vol. 24. John Benjamins Publishing, 2002.

言語喪失とは、移民のケースのように、家庭の言語(母語)と教育言語が違い、教育言語が母語より強くなった者などをいいます。

ただ、一口に「言語喪失」いっても、喪失しやすい言語的特徴と喪失しにくいものがあるということが分かっています。また、これらの「喪失者」(L1 attriters)を調査することは、言語習得・喪失のプロセスを知る上で示唆があると言われています。

今回視聴した講演では2つの研究を紹介していました。

一つ目の研究では、①ドイツ語母語話者、②ドイツ語喪失者(L1 attriters)、③ドイツ語学習者を比較していました。

ちなみに「ドイツ語喪失者」といってもドイツ語を話せないというわけではなく、ドイツ語を母語として学んだが、今、一番得意な言語はドイツ語ではない、という意味です。

結果によると、喪失者とドイツ語学習者は、動詞の活用などに関しては類似の結果が出たようなのですが、ドイツ語の名詞のジェンダーの一致などについては、ドイツ語学習者は喪失者に及ばなかったようです。

2つ目の研究では、そのジェンダーの一致について詳しく調べていました。

結果は、母語話者と喪失者については差異が見られなかったものの、やはり学習者と、母語話者・喪失者は差異が見られたようです。

ただ、学習者といっても、その学習者の母語に似たようなジェンダーの差異があるかどうかによって結果も違ったようです。

母語にドイツ語と似たようなジェンダーの差異がある場合、早期にドイツ語を学習した場合は、母語話者・喪失者と同じような結果になったのですが、成人学習者や、母語にジェンダーの差異がない学習者については、母語話者・喪失者のようにはならなかったそうです。

この結果から、言語喪失した場合であっても、ジェンダーの認識は影響を受けないのではと言っていました。