マルチモダリティ(multimodality)に関するKressの本を読みました。

この前紹介したGunther Kressマルチモダリティに関する本を読み終わりました。

  • Kress, Gunther. Multimodality: A social semiotic approach to contemporary communication. Routledge, 2009.

少しわかりづらい箇所もありましたが、いくつかおもしろい論点もあったので、メモしておきます。

(一番特筆すべき点は、言語以外の記号の大切さを述べたことだとは思いますが、この前の記事でで書いたので割愛します。)

 

聞き手の意思

Kressはコミュニケーションというのは聞き手がそれを解釈して初めて成立するといっていました(p. 35)。全体的に聞き手の意思に重きを置いているようです。

 

ソシュールに対する批判

ソシュールはシニフィアン(signifiant)とシニフィエ(signifié)の間に必然性はないと言っています。

つまり、「木」(signifié)が「木」という名称(signifiant)である必要はまったくないということです。現に、日本語では「木」は「木」と呼ばれますが、英語では「tree」、フランス語では「arbre」と名称が変わっています。

ただ、Kressはそれについては異議を唱えています。

彼は、シニフィアンとシニフィエの間には何らかの意図(motivation)が働いているといっていました(p. 65)。

Kressの出していた例は赤十字のマークです。

赤十字のマークはスイス国旗の赤と白を反転させたものですが、これはただ「赤十字」を指すだけでなく、永世中立国であるスイスと関連させることで、赤十字の「中立性」「中立的な支援機関」といった意味合いも持っているのではないかと言っていました。

つまり、名称をはじめとする社会的記号(マークやイラストその他諸々のもの)というのは適当につけられるものではなく、つけた人の何らかの意図(motivation)が働いているのではといっていました。