庵功雄・森篤嗣(編)「日本語教育文法のための多様なアプローチ」について

庵功雄・森篤嗣(編)「日本語教育文法のための多様なアプローチ」について

  • 庵功雄・森篤嗣(編)「日本語教育文法のための多様なアプローチ」ひつじ書房. 2002.

上記の本を現在読んでいます。

この本はこの「日本語教育文法」の担い手になるべき人に向けて書かれたものだそうで(p. 349)、最初に編者の庵と森が日本語教育文法の基本的な考えと研究方法を示されています。その後は、複数の寄稿者による日本語教育文法のケーススタディ研究と、その論文が書かれた経緯なども記載されています。

 

 

庵功雄の「 日本語記述文法と日本語教育文法 」

今回は冒頭の日本語教育の基本的な考えに関する、庵の以下の論文を読みました。

  • 庵功雄「 日本語記述文法と日本語教育文法 」(p. 1-11)

 

この論文では、タイトルの通り、日本語記述文法と日本語教育文法の違いについてまとめてありました。

日本語教育文法が盛んに議論されるようになったのは、2000年頃からだそうです。

 

今までの文法といえば、母語話者を対象に記載されており、100%の体系的な記述を目指し、丁寧に一つ一つの文法項目を網羅的に記述することを目的としていたきらいがあるようです。

もちろんこういう記述文法はある程度、日本語教育にも応用できます。ただ、日本語教育では文法項目の機能を細かく見ていくよりも、文法ルールを咀嚼してわかりやすくシンプル化し、学習者が使いこなせるようにすることのほうが重要ではと庵は指摘しています(詳しくは同書のp. 79からの庵の「『100%を目指さない文法』の重要性」という別の論文にも記載されていました)。

日本語教育文法というのは、日本語学習者に必要なものを吟味し、それに対応した文法記述をしていくというもののようです。具体的には、理解レベルと産出レベルを区別して記述することや、コミュニケーションのための記述を目指すこと、学習者のレベルを考慮することなどを挙げていました。