Multimodalityに対する3つのアプローチについて

参考にした本

昨日の記事でも書きましたが、一口にマルチモダリティ研究といってもいくつかの立場があるようで、下記の本にそれがまとめてあったので、メモしておきます。

  • Jewitt, Carey, Jeff Bezemer, and Kay O’Halloran. Introducing multimodality. Routledge, 2016.

↑この本のp. 8-p. 11を参考に記載しています。

 

マルチモダリティに対する3つのアプローチ

上記の本では、マルチモダリティを研究するにあたっての3つのアプローチとして以下を挙げています。

  1. Systemic Functional Linguistics
  2. Social semiotics
  3. Conversation analysis

以下、1つ1つ簡単に見ていきます。詳細については、上記の本で丁寧に説明してあるので、興味のある方は原文をご覧ください。

SFL

Systemic Functional Linguisticsは、M.A.Kハリデーを中心に発展した理論ですが、そのSFLの理論を使ってマルチモダリティを分析するアプローチがあります。

SFLは機能言語学と日本語では呼ばれたりしますが、言語の「社会的機能」に注目した理論です。

SFLに基づくマルチモダリティ研究の場合、その分析の目的は、研究対象(広告・新聞等)の社会的機能を探ることが主のようです。SFLに基づくマルチモダリティ研究の例としてはこのような本があります。

  • O’Halloran, K. (ed.) (2004) Multimodal Discourse Analysis: Systemic Functional Perspectives  , London: Continuum.

 

Social semiotics(社会記号論)

社会記号論もSFLから発展したものですが、批判的言語学の影響も受けており、社会記号論に基づくマルチモダリティ研究は、社会的機能というより、社会の中のパワー関係(power relations)により着目したものが多いようです。特に、社会規範と個人の主体性などを探るものが多いようです。

この前紹介したKressやvan Leeuwenなどがこれに入ります。

Kressの本についてはこちら↓

マルチモダリティに関するKressの本を読み始めました。

 

Kress and van Leeuwenの本についてはこちら↓

批判的談話分析(Critical Discourse Analysis)について④-方法論

Conversation analysis(会話分析)

会話分析は、やり取りはただランダムに行われるのではなく、「おはよう」といえば「おはよう」と返すのが通常になっているように、一定の社会的秩序の下に行われると考えています。その社会的ルールにはどのようなものがあるのかが会話分析の主な目的です。

会話分析の入門書について(日本語文献)

当初は会話分析は音声データの分析が多かったのですが、近年は最動画も分析対象にし、様々な角度から包括的にその社会的規則を探ろうとしています。

動画の分析を通して、「歯磨き」「食事」などの日々のルーティンをどう実施しているのか、行うにあたってどういったリソースを使っているのかなどを分析します。

これについては、以下のような本があるようです。

  • Haddington, Pentti, Lorenza Mondada, and Maurice Nevile, eds. Interaction and mobility: Language and the body in motion. Vol. 20. Walter de gruyter, 2013.

 

マルチモダリティの入門書について

マルチモダリティ研究の入門書についてはこちらの記事をご覧ください。

マルチモダリティ(multimodality)に関する入門書の紹介