会話分析の主要な概念について①:Turn-taking(話者交替/順番交替)

会話分析とは

会話分析は、自然な会話を分析し、どういったタイミングで話者が交替するのか、会話の修復はいつ起こるのかなど、その規則を探るものです。この会話分析の主要な概念について、何度かに分けて記載しようと思います。

この記事は、今までの知識とウェブなどの情報を参考に記載しています。あくまで「二次的情報」をもとにした記事なので、原書に当たりたい方は、以下の本がおすすめです。

  • Jaworski, Adam, and Nikolas Coupland. The discourse reader. Routledge, 2014.

↑会話分析(それ以外も入っていますが)で影響力の大きかった論文がまとめてあります。

 

会話分析については、以下の入門書もあります。

  • Sidnell, Jack. Conversation analysis: An introduction. John Wiley & Sons, 2011.

 

会話分析の先駆者・特徴

会話分析は1970年頃から盛んになりましたが、その創始者は以下の3名と言われています。

  • Harvey Sacks
  • Emanuel Schegloff
  • Gail Jefferson

会話分析の特徴の一つは、普段の言語使用に着目したことです。

そして、その自然会話の詳細な分析を通して、普段の会話が無秩序で行われているのではなく、一定の規則性の下、行われているということを明らかにしました。

具体的には、以下のようなものの構造を明らかにしました。

  • Turn-taking(話者交替/順番交替)
  • Adjacency pair(隣接ペア)
  • Preference(選好)
  • Opening(会話の開始部)
  • Closing(会話の終了部)

今回は一番最初のTurn-takingについてみていこうと思います。

Turn-taking

Turn-takingというのは、話者交替や順番交替などと訳されます。これは、会話分析で重要になってくる概念で、会話の参加者がどう話し手と聞き手にわかれ、いつ、どのタイミングでその役割を交替しているのかというものを探るものです。

その話者交替を探る枠組みとして、以下のようなものがあります。

  • Turn construction unit (TCU)
  • Turn relevance place (TRP)
  • Turn allocation techniques

これについて一つ一つ見ていきます。

原書に当たりたい方は、こちらの論文をご覧ください。

  • Sacks, H., Schegloff, E. A., & Jefferson, G. (1974). A simplest systematics for the organization of turn-taking in conversation. Language , 50 (4), 696-735.

Turn constructional unit (TCU)

これは会話のターンを構成する単位のことです。話者が交替するまでには、話し手の発話が続くわけですが、その話者が交替するまでの発話のことを「turn(ターン)」と呼んでいます。この「ターン」を構成するものがturn constructional unitです。

TCUは、「はい」のように語彙単位のものもあれば、「大学で」などの節の場合、また「明日会おう」のように文の場合もあります。

Transition relevance place (TRP)

これは、ある発話が終わり、話者が交替しうる時点のことを指します。つまり一つのturn constructional unitが終わりうる時点のことです。日本語では、発話の移行適切場所、移行関連場所などと翻訳されているようです。

例えば、沈黙したり、文が終わったり、下降調で話したりすると、この発話が終わり、話者が交替するタイミングになるのだなというサインになります。

Turn allocation techniques

turn allocation techniquesとは、話者が交替するときに、誰が次の話し手になるのかという、その話者の割り当てに関するものです。2人で話している場合だと、基本は2人が交代に話しますが、3人以上になるとだれが発言権を持つのかが問題になってきます。

これには3つの可能性があるといわれています。

  1. 現在の話し手が次の話し手を選択した場合、その人が次の話し手になる。
  2. 現在の話し手が次の話し手を選択しなかった場合は、最初に話し出した者が次の話し手となる。
  3. 現在の話し手が次の話し手を選択せず、また他の人で話し出す人がいなければ、現在の話し手がさらに話し続ける。
  4. 上記の(3)の場合は、次のTRPで(1)-(3)が繰り返されます。

 

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