西川・青木(2018) 「日本で生まれ育つ外国人の子どもの日本語力の盲点」という本が出版されたそうです。

日本生まれ・育ちのJSLの子どもの日本語力

以前(といってもずいぶん前ですが)、学術誌『日本語教育』で、以下の論文を読みました。

  • 西川 朋美, 青木 由香, 細野 尚子, 樋口 万喜子(2015) 「日本生まれ・育ちのJSLの子どもの日本語力―和語動詞の産出におけるモノリンガルとの差異―」日本語教育. 160 巻 p. 64-78

この論文は日本生まれ・育ちのJSLの子どもの日本語の語彙力を調べたものでした。ちなみに、JSLはJapanese as a second languageの略で、日本語が第二言語の子どもという意味です。

日本生まれ・育ちなので、日本語は一見「流暢」なのですが、この論文の調査の結果では「目薬をさす」、「ハンガーをふくにかける」、「シートベルトをしめる」、「ご飯を炊く」、「水をきる」、といったような、使用場面が家庭に限られるような語彙の習得率が低かったという結果が出ていました。

家庭で日本語を使用していない場合や、親が日本語母語話者でない場合、たしかにこういう「簡単な」語彙の習得ができないというのは納得できるものでした。英語の場合も、英語を第二言語とする子どもは家庭で使用する語彙力が弱いという調査結果があるようですが(Bialystok et al. 2010)、日本語でもそれを実証したのは大きいと思います。

ただ、英語の研究の場合は、バイリンガルの子どもは、英語モノリンガルの子どもより語彙力が低かったとしても、それが学力で必要な口頭スキル(Peets & Bialystok, 2009)や読み書き能力(Bialystok et al., 2005)には影響しないとの結果もでているようです。

日本生まれ・育ちのJSLの子どもに対する支援については、こういった簡単な語彙力の低さが、学力にも影響を及ぼすのであれば(何をもって「学力」というのかも難しいですが)、簡単な語彙の支援も必要になると思いますが、そうでないのであれば、どこまでその日常語彙の学習に力を入れるかは難しいのではと思いました。

 

 

日本生まれ・育ちの外国にルーツを持つ子どもの日本語力

それで、今回、以下の本が去年の11月に出版されたそうです。

  • 西川 朋美・青木 由香(2018) 日本で生まれ育つ外国人の子どもの日本語力の盲点—簡単な和語動詞での隠れたつまずき. ひつじ書房

上記の論文の内容や、その後の追跡調査もしているようなので、おそらくそういった一連の調査の結果がまとめられているのかなと思います。

こういった子どもたちの支援について、著者がどういう見解なのかも気になりますし、もし入手できれば読んでみたいと思います。