用法基盤モデル(Usage-based model)について

 参考にした本

用法基盤モデル(usage-based model)についての備忘録です。

用法基盤モデルについて詳しく知りたい方は、以下のLangackerの本が古典的な本と言われています。

  • Langacker, Ronald W. Foundations of cognitive grammar: Theoretical prerequisites. Vol. 1. Stanford university press, 1987.

これは第1巻ですが、文法を分析した第2巻もあります。

 

また、Tomaselloの以下の本でも説明されています。

  • マイケル・トマセロ(著)(2008) ことばをつくる―言語習得の認知言語学的アプローチ .慶應義塾大学出版会.

 

原本はこちらです。

  • Tomasello, M. (2003). Constructing a language: A usage-based theory of language acquisition. Cambridge, MA: Harvard University Press

なお、今は事例基盤モデル(Exemplar-based Model)というものも提唱されているようです。

 

 用法基盤モデル(Usage-based model)とは

どう子どもが言語を獲得するのかというのは長い間議論されている課題です。

チョムスキーは、人間というのは生まれながらに言語を習得できる機構、すなわち「普遍文法」が備わっていると言っていました。

上記のトマセロのような認知言語学者はこれに反対しています。

チョムスキーは「言語能力」に特化して考えていましたが、認知言語学者は、子どもは言語専用の能力ではなく、「相手の意図を読むこと(intention reading)」「パターンを探すこと(pattern finding)」など、一般的な認知能力を使って、言語を獲得していると考えました。

この用法基盤理論だけでなく、ハイムズ(Hymes)のコミュニケーション能力など、チョムスキーの理論に批判を加える中で発展していった理論は多く、チョムスキーの影響力を感じますね。

 

 用法基盤モデル(Usage-based model)における言語習得

用法基盤モデルでは、子どもは、言語のルールを生まれながらに知っているのではなく、言語を聞き、使用していく中で(つまりたくさんの用法を聞く中で)、スキーマと呼ばれる共通項を抽出し、カテゴリー化し、一般規則を導き出していくと言っています。

 

例えば、親子で遊んでいるときに、親が「ボールちょうだい」と子どもにいったとします。

子どもは、まずは親の意図をくみ取ろうとします。ボールを渡したことで褒められ、これが何度も継続した場合、子どもは「ボールちょうだい」というのがボールを渡すことと理解します。

その後、「〇〇ちょうだい」という型を抽出できるようになり、「ボール」以外の「お菓子」「コップ」などを使えるようになります。使用を通してルールを抽出し、言語構造を組み立ていくといっています。

 

用法基盤モデルで重要となるのは使用頻度です。使用頻度が高いものほど一般化しやすく、使用頻度が低いものは特異なものとして扱われていきます。

 

文法というと、受身形・過去形など、文を作る規則があって、それを演繹的に適用させて、文を産出するという考え方があります。

 

用法基盤モデルでは、そうではなくて、文法というのは「a structured inventory of conventional linguistic units(慣用的な言語ユニットの構造化された目録)」と考えられています。

どういうことかというと、「give me」とか「could you」などの慣用的に使われる言語表現が、見聞きする中でどんどん構造化して頭の中に蓄えられているということです。

つまり、文法がもとから頭の中にあるわけではなく、言語の使用がまずありきで、その使用をもとに帰納的に構造化していくということがポイントになります。

 

使用頻度が高いものは、一般規則として定着していき、そうでないものは特異なものとして認識されていきます。両者の中間に位置するものも含まれます。

 

そうやって膨大に蓄えられたものが言語知識となり、それは個々人の経験によって異なります。

また、「how old are you」などといった頻出する表現は、その都度、一般規則を適用させて作られているのではなく、その文のまま(つまり「how old are you」というのがセットとして)言語知識に含まれているといっています。

 

用法基盤モデルの要点

トマセロは、用法基盤理論は以下の2点に要約できるといっています。

  • meaning is use       意味とは使用である。
  • structure emerges from use  構造は使用から生まれる

一つ目は哲学者ヴィトゲンシュタインからきているそうですが、意味というのは使用の中で生まれるものであり、言葉を使うことで、人間は社会的目的を果たしているということだそうです。

また、2つ目は、文法などの言語構造は、もとから存在しているものではなく、使用する中で一般規則を導き出していくということなのかと思います。



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