言語教育におけるシラバスとその種類について③:話題シラバス・技能シラバス・タスクシラバス

参考にした本

言語教育におけるシラバスについて3回に分けて記載します。今回は最終回です。

 

言語教育におけるシラバスとその種類について①:文法シラバス・構造シラバス

言語教育におけるシラバスとその種類について②:場面シラバス・機能シラバス

↑1回目と2回目の記事はこちら

 

この記事を書くにあたって参考にしたのは下記の本のp. 31-p. 34ですが、適宜、付け足しています。

  • 高見澤孟 (2016). 増補改訂版 新・はじめての日本語教育2 日本語教授法入門. アスク出版

↑1巻と2巻があり、日本語教育の基礎情報をまとめてあるので、学部向けの日本語教授法のクラスで採用しているクラスも多いです。

 

シラバスには以下のような種類がありますが、今回の記事では話題(トピック)シラバス、技能(スキル)シラバス、タスクシラバスについて紹介します。

  • 文法シラバス(grammatical syllabus)
  • 構造シラバス(structural syllabus)
  • 場面シラバス(situational syllabus)
  • 機能シラバス(functional syllabus)
  • 話題(トピック)シラバス(topic syllabus)
  • 技能(スキル)シラバス(skill syllabus)
  • タスクシラバス(task syllabus)
話題シラバスとは

話題シラバス」とは、「教育」「宗教」「地理」「ポップカルチャー」など、話題ごとに学習内容をまとめたものです。中上級のクラスで使用されることが多いようです。学習者の興味のある話題であれば、学習者のモチベーションもあがると考えられます。

 

市販の教科書で、話題シラバスで構成されているものとしては、以下のようなものがあります。

  • 近藤 安月子・丸山千歌 (2008) 中・上級日本語教科書 日本への招待 テキスト. 東京大学出版会

この教科書の構成はこのようになっています。

  • テーマ1:女性の生き方
  • テーマ2:子どもと教育
  • テーマ3:若者の感性
  • テーマ4:仕事への意識
  • テーマ5:日本の外国人

これでもわかるように、「文法」「文型」「場面」「機能」ではなく、「話題」別に学習内容が構成されています。

 

技能シラバスとは

技能シラバス」とは、「書く」「読む」「話す」「聞く」などの技能のうち、伸ばしたい技能に着目し、その技能のでさらに詳しく学習項目を設定しているものです。

例えば、「話す」技能の場合、「ディスカッションする」「友達を誘う」「プレゼンテーションする」など「話す」技能の中でさらに細かく学習内容を決めていきます。

技能シラバスで構成されている教科書としては、以下のようなものがあります。

  • 由井紀久子・大谷つかさ・荻田朋子・北川幸子 (2012). 中級からの日本語プロフィシェンシーライティング. 凡人社

これは「書く」という技能に特化した教科書で、以下のような構成になっています。

  • アポイントをとる
  • アドバイスを求める
  • 伝言する
  • 誘う
  • 誘われる
  • 謝る
  • なぐさめる
  • 一緒に喜ぶ
  • 募集する
  • 問い合わせる
  • 依頼する
  • 依頼される
  • 報告する
  • お礼を言う
  • 経験についての感想を書く
  • 授業についてのコメントを書く
  • 自己PRを書く
  • ブログを書く

「書く」という技能に絞った上で、細かい学習項目を設定しています。

 

タスクシラバスとは

タスクシラバス」はTask Based Language Teaching(タスクベースの教授法(TBLT))に基づくものです。何かの課題を設定し、クラスではその課題を学習者に遂行させます。学習者はその課題を遂行する中で、必要な言語表現を使用することになります。その課題を遂行する経験そのものが実践的なコミュニケーション力につながるという考え方です。

タスクシラバスでは、例えば初級の場合だと「旅行の計画を立てる」「スーパーで食材を買う」「掲示板の日本語を読んで、その内容を日本語のわからない友達に伝える」など、実際に起こりうる課題別にシラバスが構成されます。

タスクシラバスのみで構成されている教科書というのは私の知る限りは知りませんが、少し前に紹介した「まるごと」という教科書では、以下のような目標(Can-do)を含んでいます。

  • 国際交流基金 (2013). まるごと 日本のことばと文化 入門 A1 かつどう.国際交流基金

 

  • 第2課 6: めいしをよみます
  • 第3課 13:ひるごはんを どこで いっしょに たべるか ともだちと はなします
  • 第3課 15: ハンバーガーのみせでかんたんな ちゅうもんを します
  • 第4課 16:ともだちを いえに しょうたいする Eメールを かきます。

「まるごと」はタスクベースの教授法(TBLT)に基づく教科書ではありません。ただ、上記の「名刺を読む」「ハンバーガーを注文する」「友達の家に招待するEメールを書く」などは実践的な課題のようにも捉えることができます。

見方によっては、一部タスクシラバスを取り入れているともいえるかもしれません。

 

話題シラバス・技能シラバス・タスクシラバスの利点

話題シラバス・技能シラバス・タスクシラバスの利点として、以下のようなものがあります。

  • 学習者のニーズに合わせてシラバスを組み立てられる。

学習者が興味のある話題、学習者が伸ばしたい技能、学習者が授業外で必要な課題など、学習者のニーズに合わせて授業を組み立てられるのが利点だと思います。

また、タスクシラバスの場合は、実践的なコミュニケーション力をつけられるという利点もあると思います。

 

話題シラバス・技能シラバス・タスクシラバスの利点

問題点としては、以下の問題はあるかと思います。

  • 文型を体系的に網羅できない。

場面・機能シラバスでも同じ問題点をあげましたが、文型を体系的に積み上げて学習することは重視していないので、これらのシラバスを初級で導入する場合はかなりの工夫が必要となるかと思います。

 

まとめ

代表的なシラバスについて3回に分けて紹介しました。自分の授業を組み立てる際も、市販の教科書を分析する際も、シラバスの種類とその特徴、利点と問題点を知っておくと何かと便利かと思います。