シューマン(Schumann)の文化変容モデル(Acculturation Model)について

シューマンの文化変容モデルとは

シューマンの文化変容モデル(Acculturation model) は、第二言語習得研究で大きな影響を与えたモデルの一つです。

今回論文を書くにあたって参考にしたのは以下の論文です。

  • Schumann, John H. “Research on the acculturation model for second language acquisition.” Journal of multilingual & multicultural development 7.5 (1986): 379-392.

 

シューマンの文化変容モデルが生まれたきっかけ

このモデルが生まれるきっかけとなったのは、下記の論文で報告されている6名のアメリカで生活する英語学習者の研究です。

  • Schumann, J. H. (1978). The relationship of pidginization, creolization, and Decreolization to second language acquisition. In Brown, J.H. and Gonzo, S., Eds., Readings on Second Language Acquisition. 1994. Pearson Japan

↑この本に収録されています。

この研究では英語学習者6名の10か月間英語の習得を観察しましたが、6人のうちの1人のアルベルト(スペイン語母語話者)という成人男性は、他の5名に比べ、英語の習得が非常に低かったそうです。

インタビューをしてみると、他の5名より、アルベルトはアメリカ社会に同化しようという意識も低く、必要最低限の英語(ピジン英語)を習得した後、それ以上のことをしようとはしていなかったようです。

また、普段からプライベートでもスペイン語話者と付き合い、英語話者とはあまり接触しようとはしていなかったそうです。

この結果から、シューマンは、言語習得には、言語そのものを学ぶことだけでなく、学習者が社会的にも心理的にも新しい文化に溶け込んでいるか(またはどのくらい距離を感じているか)が関係していると考えました。

この新しい文化に適応することを「文化変容」と呼んでいます。

言語習得の社会的・心理的要因に目を向けたことで注目を浴びた論文です。

 

文化変容モデル

学習者が新しい文化に溶け込めるかどうかに影響を及ぼす要因として、以下の2つを挙げています。

  • 社会的要因(social factors)
  • 情意的要因(affective factors)

社会的要因としては、以下のようなものがあげられます。

  • 学習者グループが社会的に支配的な立場にあるか、または低い立場にあるかなどといった社会的地位
  • 学習者グループがどのぐらいライフスタイル等を目標言語のグループに同化しているか
  • 学習者グループの団結力の強さや規模、態度、目標言語グループとの接触量、居住期間など

例えば、移民のグループがそこでコミュニティを形成し、そのコミュニティの団結力が強ければ、目標言語の習得は進みづらいと言えます。

また、植民地支配の場合など、自分のグループの言語が社会的に優位の立場にある場合、被植民地グループの言語を学ぼうとするインセンティブも働かない可能性が高いです。この場合も習得は進みづらいと考えられます。

 

情意的要因としては以下のようなものがあります。

  • 言語を話すことへの抵抗感の度合い、新しい文化に適応することへの不安の度合い、モチベーション、どれだけ新たな自己を形成できるか
まとめ

シューマンの文化変容モデルについて記載しました。この文化変容モデルについては、質的な研究を論拠にしていて、どこまでそれが一般化できるかという点で批判も受けています。

ただ、この社会的・心理的要因について指摘し、モデルとして示したことによる功績は大きいと言われています。