認知症の診断で使われる「Cookie Theft picture」での語用論的スキルの役割について

今回読んだ論文

Louise Cummingsの以下の論文を読みました。

  • Cummings, Louise. (2019) ‘Describing the cookie theft picture: Sources of breakdown in Alzheimer’s dementia’, Pragmatics and Society, 10 (2): 151-174.

 

彼女はSpeech and Language Therapist (SLT)(日本だと言語聴覚士(言語療法士)?)の養成にも携わっているようで、学生向けのスピーチセラピーの入門書も出版しているようです。

  • Cummings, Louise. (2018) Speech and Language Therapy: A Primer, Cambridge: Cambridge University Press.

 

Cookie Theft Pictureとは

認知症の診断において、絵を提示して、その絵を説明するようにいうタスクがよく使われるようです。

 

実際に診断に使われる中でも、有名な絵が、以下の、母親がお皿を洗っている間に息子がクッキーを盗むという絵(Cookie Theft Picture)のようです。

  • Mark Liberman (2018). Cookie theft renewal. Language Log <https://languagelog.ldc.upenn.edu/nll/?p=40027>から転載

 

今回読んだCummingsの論文では、Pittsburgh大学のデータを使って、健常者とアルツハイマー型認知症の人がどう違うかを比べていました。

アルツハイマー病の人には、以下のような共通の特徴が出ていたそうです。

  • 絵の中の一部の情報しか説明しない(女の子の存在は言わないなど)
  • 繰り返しが多い
  • 語彙が正確でない(「クッキー(cookies)」じゃなくて「食べ物(food)」といったりするなど、一般的や用語を使いがち)
  • 何を指しているか分かりづらいところがある

こういった項目は語用論的スキルの範疇に入るのですが、こういった語用論的要素が判断の目安となるようですね。

 

まとめ

数年前もコミュニケーション理論を認知症のケアに応用させた例について記事を書きました。

応用言語学からの認知症に対するアプローチ

ケアだけでなく、認知症の診断にも応用言語学の知見が貢献できるところはあるようですね。

上記の「Speech and Language Therapy」の本も、入門書で読みやすそうなので、機会があれば読んでみたいと思います。