SLA(第二言語習得)の歴史的変遷①:1960年代・1970年代の習得順序研究や誤用分析

SLAとは

SLAとはSecond Language Acquisition(第二言語習得)の略です。1960年頃から活発に研究されるようになった分野です。

このSLAの歴史的変遷について、以下の4つの時代に分けて説明します。

(記事自体は計8記事で記載します。各番号をクリックすると、該当する記事にアクセスできます)

  1. 1960年代・1970年代~:黎明期(
  2. 1980年代~:SLA研究の発展(
  3. 1990年代~:社会的アプローチ・認知的アプローチ(
  4. 2000年代~:多様化の時代(

第二言語習得と一言にいっても様々な研究がなされているため、このようにざっくりまとめてしまうことに問題もありますし、この分け方にも異論はあると思います。

ただ、個人的には、全体像を知る上でも、ある程度ざっくりでも流れを知っておくのは役に立つと思います。

 

1960年代・1970年代:黎明期

今回の記事では1960年代・1970年代の黎明期について取り扱います。

 

この頃、第一言語習得(母語・第一言語をどう子どもが習得するか)の研究では、言語習得には一定の順序があると唱えられるようになります。

  • Brown, Roger. A first language: The early stages. Harvard U. Press, 1973.

↑有名なのはBrown(1973)の研究です。BrownはAdam, Eve, Sarahという3人のこどもの言語発達を観察し、3人の形態素の習得に順序があることに気づきました。

 

第二言語習得の場合、学習者の間違いというのは、自分の母語・第一言語からの影響によるもの(母語の干渉)と言われていました。

ただ、Dulay and Burt (1973)は、以下の論文で、それに異を唱えます。

  • Dulay, Heidi C., and Marina K. Burt. “Should we teach children syntax?.” Language learning 23.2 (1973): 245-258.

2人は、学習者の誤り(error)は、母語干渉によるものだけではないといい、母語が何であったとしても、共通に第二言語学習者に観察される間違いがあると唱えました。

例えば、日本語の場合だと、学習者はよく「いいから」とか、「楽しい時間」など、動詞の接続を間違えたり、名詞修飾で「の」をつけたりすることがありますが、これは母語に関わらずよく見られるように思います。

 

第二言語における習得順序に関する研究

では、第二言語習得プロセスで、共通で見られる特徴があるのであれば、それは何なのでしょうか?

第二言語はどういうプロセスで習得されるのでしょうか?

 

こういった疑問に答えるため、1960年代や1970年代は、第二言語における習得順序に関する研究がなされるようになります。

 

  • Cancino, Herlinda, Ellen Rosansky, and John Schumann. “The acquisition of English negatives and interrogatives by native Spanish speakers.” Second language acquisition: A book of readings (1978): 207-230.

↑例えばCancino et al (1978)は上記の論文で、スペイン語が母語の学習者が英語の否定表現・疑問表現をどう習得するかを研究しました。

 

上記のDulayとBurtも習得順序に関する研究をしています。

  • Dulay, Heidi C., and Marina K. Burt. Natural Sequence in Child Second Language Acquisition. 1. Language learning, 1974, 24.1: 37-53.

↑2人はこのような本も出版しています。

 

誤用分析

また、習得プロセスを探るにあたり、学習者の誤用分析もおこなわれるようになります。

 

  • Corder, Stephen Pit. “The significance of learner’s errors.” IRAL-International Review of Applied Linguistics in Language Teaching 5.1-4 (1967): 161-170.

↑Corder(1967)の論文は誤用分析の嚆矢となったものです。

Corderは、エラー(error)間違い(mistakes)を分けて考えました。

エラーは、規則的に間違えている誤りで、間違いは偶発的な誤りです。

早口で話して間違えてしまったものは間違い(mistakes)になりますが、言語のルールを知らずに間違えている場合はエラー(error)です。

 

  • Richards, Jack C. Error analysis: Perspectives on second language acquisition. Routledge, 2015.

↑誤用分析についてはこのような本もあります。CorderやDulay & Burtも寄稿しています。

 

 

まとめ

1960年・1970年頃から第二言語習得研究が行われるようになりますが、初期の第二言語習得研究は、習得順序や、習得のプロセスで見られる特徴(誤用など)に着目した研究が多かったようです。

第二言語学習理論と教授法①:行動主義

↑なお、少し前にも第二言語学習理論と教授法についての記事を書いたので、興味のある方はこちらもご覧ください。こちらは教授法に着目したものです。