「I think」の英語母語話者・非母語話者の使い方の違いについて

今回読んだ論文

以下の2つの論文を読みました。

  • Zhang, Grace Q., and Peyman GP Sabet. “Elastic ‘I think’: Stretching over L1 and L2.” Applied linguistics 37.3 (2016): 334-353.
  • Baumgarten, Nicole, and Juliane House. “I think and I don’t know in English as lingua franca and native English discourse.” Journal of Pragmatics 42.5 (2010): 1184-1200.

どちらも会話における「I think」の使用について英語母語話者と非母語話者(Baumgarten & Houseは「リンガフランカとしての英語使用者」といっていました)を比較していました。

 

I thinkの使用の違い

どちらの論文でも共通していたのは、同じ「I think」といっても、使われ方には違いがあるということです。以下のようなものをあげていました。

  • I thinkの使用頻度は非母語話者のほうが多い(Zhang and Sabet 2016; Baumgarten and House 2010)
  • 母語話者は、非母語話者に比べ、This party is going to be, I think, at Mary’s houseというように、文中に「I think」を入れる頻度が高い(Zhang and Sabet 2016)
  • 非母語話者はI think it’s not trueのように、「I think + 否定表現」が多いが、母語話者はI don’t think it’s true というように、「I don’t think+肯定表現」が多い(Zhang and Sabet 2016)
  • 非母語話者のほうは、I thinkを使わなくても自分の意見が分かるような状況で、自分の主観的立場を明らかにするためにI thinkを使用することが多い(Baumgarten and House 2010)
  • 母語話者は、自分の主観的立場を述べるというより、一種のルーティーンのようにI thinkを使うことも多い(Baumgarten and House 2010)

 

「I think」という同じ語を使っていたとしても、使用頻度や、文頭・文中・文末にあるのかなどの位置、他にどんな語と一緒に使われているのかなどを探ると、違いがあるようですね。

また、非母語話者の母語によっても違いがでたそうです。

 

どちらの論文も、非母語話者の使用を母語話者の使用に近づけるというよりは、非母語話者(またはリンガフランカとしての英語使用者)の使用には一定の傾向があり、それを探るといった立場のようでした。

 

その他の本

  • Zhang, Grace Q. Elastic language: How and why we stretch our words. Cambridge University Press, 2015.

Zhang and SabetはI thinkを説明するときに「elasticity(順応性)」という概念を使っていたのですが、それについてZhangは書籍も執筆しているようです。

 

  • Baumgarten, Nicole, Inke Du Bois, and Juliane House, eds. Subjectivity in Language and Discourse. Brill, 2012.

Baumgarten & Houseも主観性に関する本も出版しているようです。