ベルギーのフランダース地方の教育における言語政策:Tussentaalと標準オランダ語

ベルギーの公用語について

ベルギーの公用語はオランダ語、フランス語、ドイツ語の3つです。

北部のフランダース(フランドル)地域ではオランダ語(フラマン語)、ワロン地域ではフランス語(ワロン語)、そして南東部の一部の地域ではドイツ語が話されています。

 

  • 石部尚登(2011) ベルギーの言語政策 方言と公用語. 大阪大学出版会

↑ベルギーの言語政策については、日本語でも書籍が出版されているようです(読んでいませんが…)

 

北部のフランダース地域においては、オランダ語標準語とフラマン語(フランダース地域で話されているオランダ語の変種)の中間言語である「Tussentaal」という言語が、口語として普及しているようです。

最近の若者の大半は「Tussentaal」が母語だとのことです(Delarue and Caluwe 2015, p. 12)。

 

フランダース地域における教育での言語政策

今回読んだ以下の論文では、このフランダース地域における教育における言語政策について記載していました。

  • Delarue, Steven, and Johan De Caluwe. “Eliminating social inequality by reinforcing standard language ideology? Language policy for Dutch in Flemish schools.” Current issues in language planning 16.1-2 (2015): 8-25.

 

この論文では、現在のフランダース地域の教育においては、標準オランダ語が学校内外で唯一の認められる言語としており、Tussentaalやフラマン語などの言語内の多様性を否定しているそうです。

この考えの背後には、標準オランダ語を学ぶことが、社会参加や社会経済的位向上に必須という考えがあるといい、オランダ語が母語ではない移民のこどもや、家庭ではTussentaalやフラマン語を話す子どものどちらにも、標準オランダ語を学ぶことを促しているようです。

 

この論文の著者はTussentaalが実際に使用されている現状を鑑みて、もっと教室・学校内でTussentaalの役割を検討すべきだと述べていました。

 

まとめ

この論文もそうですが、公的な場でのモノリンガリズム(今回の場合は標準オランダ語の使用)を、どのくらい強制すべきなのかというのはよく議論されていますね。

以前紹介したGramlingの「The invention of monolingualism」では「モノリンガリズム」というのが一種のイデオロギーだとありました。

ただ、現実の言語の多様性を公の場でもプライベートな場でもどこまでサポートすべきなのか(そして現実的にどこまでサポートできるのか)というのは難しい問題ですね。