「Discourse: A critical introduction」一部読了。ディスコース分析でグローバリゼーションからの視点が欠けていると指摘しています。

Blommaert(2005)のDiscourse: a critical introducationの第1章から3章までよみました。Blommaertはディスコース関係で最近よく名前を聞く学者です。この前の記事でも少し紹介しました。

  • Blommaert, Jan. Discourse: A critical introduction. Cambridge University Press, 2005.

Blommaertはディスコース分析の中でも、社会の権力関係や不平等に注目しているようです。

この権力関係に目を向けたディスコース分析というと、批判的ディスコース分析(CDA)が有名ですが、それだけでなく、アメリカの言語人類学や社会言語学でも同じような視点が為されてきたといっています。

ただ、彼は今までの研究(特に批判的ディスコース分析)では、グローバリゼーションという大きな「コンテクスト」に対する視点が欠けていると批判しています。例えば、批判的ディスコース分析(CDA)は、社会的・政治的権力関係を分析していますが、「医者と患者」「政治家と庶民」など身近な権力関係(しかも分析する前から答えありきで分析をしている場合が多い)に目を向けていることが多いといっていました。

例えば、Blommaertは(第三章)、ベルギーに亡命したアフリカ政治的亡命者の話を例に挙げ、彼らはフランス語が拙く、また法的言語も慣れていないため、誤解され「信用できない」とみなされる確率が高かったと言っています。

Blommaertは言語資源というのは階層化されていて、アフリカ政治的亡命者のように「標準語であるフランス語」や「法的言語」などの言語資源をそもそも持ち合わせていないことも多く、グローバルな世の中における、この言語資源の分配の問題にも目を向ける必要があると言っていました。