アルジュン・アパデュライ(Arjun Appadurai)の5つのスケープ(scapes)について

アルジュン・アパデュライ(Arjun Appadurai)について

アルジュン・アパデュライ(Arjun Appadurai)は文化人類学者で、彼の1996年に書いたグローバル化時代の文化論はカルチュラルスタディーズなどに大きな影響を与えています。

  • Appadurai, Arjun. Modernity al large: cultural dimensions of globalization. Vol. 1. U of Minnesota Press, 1996.

 

この本は「さまよえる近代―グローバル化の文化研究」という題で日本語訳も出版されています。

 

この前、このアパデュライの「culture/cultural/culturalism」について紹介しました。

アパデュライは第2章で、global cultural flow(グローバルな文化の流れ(フロー))として5つのスケープ(scapes)挙げているのですが、それについて私の理解した限りでですが、紹介します。

 

もし興味のある方はぜひ原文をお読みください。

 

グローバルな文化フロー(global cultural flow)

当時、文化といえば、Karchuの同心円モデルにもあるように、中心・周縁という関係で語られることが多かったようです。

 

アパデュライはグローバル時代の文化というのは、この中心-周縁という関係性で文化を考えることはできず、もっと複雑なものだと考えています。

 

このグローバル時代の文化をとらえるために、グローバルな文化の流れ(フロー)(global cultural flow)には以下の5つの次元があげています。

 

グローバルな文化のフロー
    • エスノスケープ(Ethnoscapes)
    • メディアスケープ(Mediascapes)
    • テクノスケープ(Technoscapes)
    • フィナンスケープ(Financescapes)
    • イデオスケープ(Ideoscapes)

 

すべてには「scapes」という接尾辞がついています。

「scapes」は「landscape(景観・風景)」からきています。

例えば、「ethnoscapes」だと、「人の流れが織りなす景色」というような意味かなと思います。

 

また、このscapesと英語では複数になっています。つまり、下記の一つ一つの要素が作り出す風景は、一つではなく複合的かつ重層的なものということのようです。

 

また、アパデュライはこのscapesを説明するときに、disjuncture(乖離)という言葉を使っています。

これは、上記の一つ一つの「scapes」がすべて同じよう方法で、同じスピードで動くわけではなく、別個に動いているということかと理解しました。

 

5つのスケープ

エスノスケープ

エスノスケープは、上記にも述べましたが、人の流れに関することです。

観光客・移民・難民・亡命者・季節労働者などの移動により、国内・国際政治が大きな影響を受けています。

 

メディアスケープ

メディアスケープは、メディアが作り出す世界や、そのグローバルレベルでの情報配信に関するものです。

 

テクノスケープ

テクノスケープは技術の国境を越えた発達・拡散に関するものです。

 

フィナンスケープ

フィナンスケープは金融のことで国境を越えた金銭の移動やトランスナショナルな経済関係のことです。

 

イデオスケープ

イデオスケープは「自由」「民主主義」「権利」などの観念等の普及のことです。

 

まとめ

アパデュライは、この人、テクノロジー、メディア、資本、観念が世界中を流動していると考えました。

また、この5つのフローがどういう関係性をもちながら生じているかを知ることが、グローバル時代の文化を考えるためには大切と考えています。

 

このようにグローバルな視点で、文化を捉えたことで、彼の理論は大きな影響力がありました。

ただ、なぜこの5つのスケープを選んだのかや、この5つのスケープの間の影響力の強さの度合いなど、この本では理論化されていない点も多いようです。