内容言語統合型学習(CLIL)の「4つのC」について(Content, Communication, Cognition, Community)

内容言語統合型学習(CLIL)とは

CLILはContent and Language Integrated Learning(内容言語統合型学習)の略です。

ヨーロッパで生まれたもので、言語と教科内容を同時に教えることを目的としており、近年は実践報告などが増えています。

CLILの原理や教育方法というのは、実はそこまで目新しいものはないといわれています。ただ、既存の要素をうまく結びつけたことが画期的だったようです。(渡部他 2011, p. 4)

 

また、一口にCLILといってもかなり柔軟性があり、同じ「CLIL」という名前を使っていても、単発のクラスだったり一学期を通したコースだったり、内容や言語の比重が違ったり、その実践内容は様々だったりします。

CBI(Content-Based Instruction)とCLIL(Content and Language Integrated Learning)の違いについて

また、よく似たものにCBIがあります。その違いについては上記の記事をご覧ください。

 

CLILの「4つのC」

CLILは以下の「4つのC」を掲げています。

  • Content(内容)
  • Communication(言語知識・言語使用)
  • Cognition(思考)
  • Community/Culture(協学・異文化理解)

 

CLILは、この4つの枠組みを取り入れながら教材開発や指導をすることで、教育の質が高くなると考えています。

 

この4つについて、『CLIL(クリル) 内容言語統合型学習 上智大学外国語教育の新たなる挑戦 第1巻 原理と方法』のp. 4~13の記載を参考に記載します。

 

Content(内容)

その名のとおり、新しく得られる知識やスキル、理解のことを指します。

教科学習の内容のことです。数学の授業であれば、微分法とか積分法とか三角関数とかなどのいわゆる学習の内容がそれにあたります。

日本の2020年の時事問題について学ぶクラスであれば、「東京オリンピック延期」とか「コロナウィルス」などの扱うトピックが内容になるのではと思います。

 

Communication(言語)

これは言語的要素のことですが、英語で「communication」となっていることからもわかるとおり、CLILでは実際の言語使用により重い比重が置かれています。

とはいえ、文法・語彙の習得というようないわゆる言語知識の獲得も必要と考えており、以下の「3つの言語」を有機的に組み合わせることが大切と考えています。

 

language of learning(学習の言語)

Language of learning(学習の言語)は、その単元の重要語句や必須文法項目のことです。

 

例えば、日本語学習者が、日本の時事問題で「コロナウィルス」について学ぶ場合は、「コロナウィルス」や「三密」といった重要語句の習得や、読み物にでてくる文法の学習が含まれます。

 

Language for learning(学習のための言語)

Language for learning(学習のための言語)は、学習のために必要な表現や学習スキルです。

 

日本語学習者が時事問題のクラスを受けるとき、講義のポイントをメモする方法や、資料を読みこなす方法、日本語でディスカッションをする方法や、レポートを書く方法などが含まれます。

 

Language through learning(学習を通しての言語

Language through learning(学習を通しての言語)は、すでに学んだ言語材料や学習スキルを組み合わせて何度もリサイクルさせることです。

 

時事問題で「コロナウィルス」を扱う場合、まず読み物を読み、講義を聞き、ディスカッションをし、そしてそれをレポートにまとめ、プレゼンをする、というように、すでに学んだ言語や学習スキルを組み合わせて何度も繰り返すことで、学習を通じて言語習得が加速できるとCLILでは考えているようです。

 

Cognition(思考)

LOTSとHOTS

思考もCLILは表面的な学習(shallow/surface learning)深い学習(deep learning)にわけ、これらをバランスよく取り入れることを推奨しています。

表面的学習は知識の理解や暗記で、深い学習は、その内容を既存の知識・経験と結び付けたり批判的に考察することです。

 

ただ、具体的に何が表面的で、何が深い学習なのかというのはわかりにくいと思います。

 

そこで、CLILはBloom’s Taxonomy(ブルームの分類学)という、Benjamin Bloomが1956年に提唱した有名な思考の分類を援用しています(使用しているのは、Andersonが改訂したバージョンのものです)

 

この改訂版では、思考の分類法として、①記憶、②理解、③応用、④分析、⑤評価、⑥創造という6つを挙げています。

このうち最初の三つ(①記憶、②理解、③応用)を低次思考力(LOTS(low-order thinking skills))、後半の3つ(④分析、⑤評価、⑥創造)を高次思考力(HOTS(high-order thinking skills))とし、このLOTSとHOTSをバランスよくいれることを推奨しています。

 

LOTSとHOTSの例

日本語学習者が、日本の時事問題で「コロナウィルス」を学ぶ場合、低次思考力には、「アベノマスク」、「三密」などの語彙を記憶したり、新聞記事などを理解したり、記事についてディスカッションするなどして応用することが含まれるようです。

それに対し、高次思考力には、日本のコロナウィルス関連の政策をとりあげるのであれば、その政策の効果を分析したり、評価したり、グループで問題解決のための案を考えていくことなどが含まれるようです。

 

Community(協学)

CLILは、教室、学校、市町村、国、地域、地球とさまざまなレベルのコミュニティを意識して学習を進めることを大切にしています。

一番ミクロのレベルでは、クラス内でのペアワークやグループワークがあります。こういった他者との交流は、相手とともに学ぶことであり、狭義のcommunityに含まれるようです。

一番マクロのレベルは地球全体になります。例えばトピックで「コロナウィルス」を扱っている場合、世界規模で影響を与えている問題でもあるので、「地球市民」の一人として学習者を位置づけていくことも可能となります。

 

いずれにせよ、コミュニティを意識しながら学習することが必要になるようです。

 

(なお、最近はcommunityの代わりにcultureという用語を使っているようです。)

 

 

もっと知りたい方は

今回の記事も以下の本の最初の部分を参考に記載しましたが、もっと興味のある方はそちらを読まれると理解が深まるのではと思います。

  • 渡部良典, 池田真, 和泉伸一. (2011). CLIL (クリル) 内容言語統合型学習 上智大学外国語教育の新たなる挑戦 第 1 巻 原理と方法. 東京: 上智大学出版局.

 

全3巻あり、CLILの実践方法や具体的な授業例・教材作成例なども紹介されています。