高野 陽太郎 「日本人論の危険なあやまち 文化ステレオタイプの誘惑と罠」を読みました。

日本人論の危険なあやまち

以下の本を読みました。

  • 高野 陽太郎(2019)『日本人論の危険なあやまち 文化ステレオタイプの誘惑と罠』ディスカヴァー・トゥエンティワン

 

この本は「日本人は集団主義的」という日本人論の中核をなす通説が、事実に即していないことを、今までの実証データやこの通説が生まれた歴史的経緯を通して示していました。

 

本のポイント

この本によると、日本人論でよく出てくる、「日本人は集団主義的」という考えは19世紀のアメリカ人の偏見からはじまったといいます。

 

日本人が集団主義的という根拠の一つに、戦時中の日本の集団主義があげられるようですが、著者はそれも「対応バイアス」の結果といっています。

 

対応バイアスというのは、外部の状況を考えず、その人の内部にある特性が原因だと考えてしまうことです。

 

戦時中に集団主義的行動をとるのは、どこの国でもよく見られることです。ただ、他人(この場合は「アメリカ人」からみた「日本人」)がそれをした場合、それは状況のせいではなく、その人がそういう特性をもっていたからだと考える傾向があるそうです。

 

つまり、戦時中だからそういう行動だったという外部の状況を考えず、「日本人はそもそも集団主義だから」そうしたのだ、と考えることです。この対応バイアスは、人間一般によく見られる行動で、外部状況を考慮するより、物事を簡単に説明できることがその一因かもしれないと著者は指摘していました。

 

一度通説になってからは、自分の先入観にあった事例ばかりを探す「確証バイアス」が働き、「日本人が集団主義的」という事例のみ注目されるようになり、通説がより強くなっていった、と述べています。

 

感想

日本人論への批判などは応用言語学では、Kubota (2012)などが行っています。ただ、例がどうしても言語関係中心になってしまいます。

 

この本は、実証研究のデータや、政治やビジネスなどの多様な例を用いて説明しているので、わかりやすいです。

また、「こういうことをいうと、こういう質問を受けたことがある」など著者が今まで受けた経験なども書いています。

 

もし日本文化などを教えることのある人には、役に立つ例が多くあり、学生に何かを説明するときに非常に参考になるのではないかと思います。