「日本語研究のための認知言語学」読了①。認知言語学についてもっと知りたいです。

日本語研究のための認知言語学

籾山(2014)の「日本語研究のための認知言語学」を読みました。

  • 籾山洋介. 日本語研究のための認知言語学. 研究社, 2014.

認知言語学について知りたいと思っていた私にとっては、日本語の例で説明してくれていたのでとてもわかりやすかったです。

頭で考えたり心で思ったりするといったような、人間の認知能力には、「同じ物事に対する異なる捉え方」、「視点の転換」、「焦点化」、「カテゴリーを伸縮」などといったものがあるようです。第1講から5講ではこれについて例をあげて説明していました。簡単にメモしておきます。

 

同じ物事に対する異なる捉え方

認知能力の1つとして、視点を変えて1つの物事をいろいろな視点から捉えることができるということがあります。
第2講では「ナゴヤドームの中日・巨人戦の観客数が4万人であった」という事柄も焦点の違いによって様々な捉え方ができるといっていました。

観客の数に焦点を当てた場合:「ナゴヤドームの中日・巨人戦の観客は4万人に上った」
中日・巨人戦という催しに焦点を当てた場合:「ナゴヤドームの中日・巨人戦は4万人の観客を集めた」
会場に焦点を当てた場合:「ナゴヤドームは4万人の観客を飲み込んだ」

 

視点の転換

相手の視点に立って物事を捉えるというのも認知能力の1つだそうです。

子どもと話すときに、子ども目線に立って「お父さんが教えてやるよ」などというのも視点の転換だといっています。

「ありがた迷惑」(相手はありがたいと思っているが自分は迷惑)、大きなお世話(相手は好意でお世話をしているが、こっちは迷惑)など複数の視点が入っているといっています。

 

焦点化

認知能力は、複数の要素から構成される物事について、異なる要素を焦点化することができます。上記のナゴヤドームの例もその1つで、焦点の違いによって表現も変わってきます。

 

カテゴリーを伸縮

必要に応じて柔軟にあるカテゴリーを伸縮するというのも認知能力の1つであり、ある言葉が本来の意味よりも狭い意味を示したり、逆に広い意味を示すことになることがあります。これを「シネクドキ」(堤喩)といいます。

これと関連してメトノミーという概念もあります。シネクドキが2つのカテゴリーの大小を表わすのに対し、メトノミーは隣接性に基づくものだそうです。

シネクドキ(堤喩)とメトノミー(換喩)の用語について

↑この2つについては別の記事でまとめましたので、よければご覧ください。