Barnett (1997)の高等教育における批判性の育成に関する本の続きです。

この前のBarnettの本の続きです。

  • Barnett, Ronald (1997) Higher education: A critical business.Buckingham, UK. Open University Press

大学ではよくcritical thinkingの養成と言われますが、この本でBarnettは、critical thinkingは実務的スキル等の狭い定義がされることが多いと指摘し、critical being(批判的な存在:批判的な人)を養成する必要があるといっています。

彼によると、critical beingというのは、ただのいわゆるスキルだけにと留まらず、①知識や理論に対する批判的視点といったcritical reason、②世界に対して行動するcritical action、③そして自らを自己批判するというcritical self-reflectionという3つの側面に関係するといっています。この3つの側面は完全に分けることができず、相互に関係し合っているそうです。

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Barnett, Ronald (1997) Higher education: A critical business.Buckingham, UK. Open University Press. Figure 8.1 Critical being as the integration of the three forms of criticality (p.105)より転載

上の図のようにcritical being(批判的な人)というのは3つの側面いずれにも関係しているそうです。
また、以下の表のように、この1つ1つの側面の批判性のレベルを提示していました。上記の図のcritical reasonは、下記の表の「knowledge」、critical actionは「world」、critical self-reflectionは「self」にそれぞれ対応するそうです。

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Barnett, Ronald (1997) Higher education: A critical business.Buckingham, UK. Open University Press. Table 8.1 Levels, domains and forms of critical being(p.103)より転載

例えば、「自己」の場合だと、まずは自己について一歩下がってモニターすることから、自己内省、自己発展、自己の再構築とレベルがあがっていくそうです。「知識」「世界」についても同様で、テキストや身近な環境について批判的に考え、問題を解決することから、最後は自らの知識の枠組みそのものについて批判し、共同的に世界を再構築していくところまでレベルを掲げています。