Ortega (2013)の21世紀の第二言語習得研究(SLA)に関する論文を読みました。

Ortegaについて

Lourdes Ortegaはジョージタウン大学の教授で、有名な学術誌Language Learningの編集者も務めています。
第二言語習得関係の出版物も多数あります。↓

  • Ortega, Lourdes. Understanding second language acquisition. Routledge, 2014.

今回読んだのは、以下の論文です。

  • Ortega, L. (2013). SLA for the 21st century: Disciplinary progress, transdisciplinary relevance, and the bi/multilingual turn. Currents in Language Learning, 63, Supplement 1.

 

現在のSLAの問題

第二言語習得研究(SLA)は、1970年代にセリンカー(Selinker)が中間言語を提唱してから盛んになり、今で40年ほどの歴史があるそうですが、Ortegaは現在の課題の一つとして、SLAは他の分野の影響を大きく受けているものの、SLAが他の分野に与えた影響は限定的であることが挙げられるといっています。

どうして他分野に影響力がないのかという点については、SLAがこの40年間、「モノリンガルの子供の第一言語習得と、大人の第二言語習得はどう違うのか」という狭い視野で研究をしていたからだといっています。

その上で、もっと広い視野で、言語研究においてSLAを位置づける必要があるといっていました。

 

これからのSLA

OrtegaはSLAを広い視野で位置づける際に鍵となる点は、①習得時期と②習得言語の数という2つのパラメータだといっています。

この2つのパラメータに当てはめると、第二言語習得の特徴は、①後期(later in life)に習得し、②バイリンガル(マルチリンガル)になるということです。

このパラメータを踏まえると、以下の図に書いてあるような分野との関連性も見えてくるといっています。(LAは言語習得(language acquisition)の略です)。

Ortega (2013), p. 8を参考に作成

例えば上の図の右側の上から二番目にある第二言語習得(Second LA)は、リテラシーなどの第二変種(方言)習得(second dialect acquisition)、言語喪失(attrition)などの研究とも密接に関連しています。

第二言語習得を「後期に習得するバイリンガリズム/マルチリンガリズム(late bi/multilingualism)」研究と位置づけなおすことで、他の言語関係の分野との関わりを明確にし、言語教育にも貢献できるのではといっていました。