概念メタファーの翻訳を言語学習に活用するというSidiropoulou and Tsapaki (2014)の論文を読みました。

この前、概念メタファーについて紹介しました。概念メタファーの言語教育の活用法も以前紹介しましたが(詳しくはこちら)、今回もそれと関連して、概念メタファーの英語・ギリシャ語間の比較を通して、言語学習に役立てようという以下の論文を読みました。

  • Maria Sidiropoulou & Efpraxia Tsapaki (2014) Conceptualisations across English–Greek parallel press data: a foreign language teaching perspective, The Interpreter and Translator Trainer, 8:1, 32-51

読んだことはありませんが、著者の一人のSidiropoulouは、翻訳関係で数冊出版しているようです。

  • Sidiropoulou, Maria. Identity and difference: translation shaping culture. Peter Lang, 2005.

この論文では、英語・ギリシャ語間の概念メタファーの類似点・違いを学生に意識させることで、外国語のクラスで文化間能力の向上を試みることができるのではというものでした。

具体的には、メディア記事の英語・ギリシャ語のパラレルコーパス(対訳データ)を使って、概念メタファーの類似点・違い等を紹介した後、いくつか練習問題の例も提示していました。

この論文で紹介されていた多数の例から、1つだけ例を挙げると、例えば英語では

政党は船(A POLITICAL PARTY IS A SHIP)」によく例えられるそうです。

なので、政治関係の記事では、以下のような文が英語では見られたそうです。

「Mr. Kan may be thrown overboard by his party before he can do any of these things」(p. 38)
(菅氏は、これらのことを実施する前に、自身の政党から見捨てられるおそれがある)

ここで、政党を船に例え、「thrown overboard」(船外に捨てる)という表現が使われています。

ただ、ギリシャ語(日本語もそうだと思いますが)では、このように「政党は船」に例えられることが不可能ではないものの、この文脈ではあまり適切ではないため、「forced to resign(辞任せざるをえない)」という英語に対応するギリシャ語になっていたようです。

こういった概念メタファーを意識させることで、文化間意識の向上にもつながるのではといっていました。