モダリティ研究の概要についてまとめたNarrogの本を読みました①

モダリティ研究について調べてみたかったので、以下の本の第2章と第3章を読んでみました。第2章ではモダリティの概要、第3章では日本の言語学でのモダリティの扱いについて記載されています。

  • Narrog, Heiko. Modality in Japanese: The layered structure of the clause and hierarchies of functional categories. Vol. 109. John Benjamins Publishing, 2009.

モダリティの定義

現在の言語学では、モダリティについては以下の2つの立場が主流だそうです(p. 7)。

  1. 文の命題以外のところにある要素
  2. テンス・アスペクト・ヴォイスなどと同様の文法的範疇

1.については、

  • 彼は来るだろう
  • 彼は来るかもしれない
  • 彼は来るはずだ
  • 彼は来たほうがいい

という文があった場合、「彼が来る(命題)」以外の部分(「だろう」「かもしれない」「はずだ」「ほうがいい」)などをモダリティという立場のようです。

この本では2.の文法的範疇としての立場をとっています。

 

文法範疇としてのモダリティ

文法範疇については、tense vs temporality、aspect vs aspectualityのように、文法範疇(tense、aspect)に対し、その概念的範疇を表す対応する用語(temporality, aspectuality)があるといっていました。

Modalityについても、これと同様、以前はmood vs modalityと、文法範疇を表すときには「mood」という用語を使うことが多かったようですが、最近はモダリティという用語が文法範疇と概念的範疇(notional category)の両方を指すようになっているといっていました。

また、モダリティを2.の立場の文法的範疇の一つとみなした場合も、以下の3つの考え方があるといっていました(p. 8)

  1. 「必然性」や「可能性」などを表す様相論理(modal logic)としてのモダリティ
  2. 話者の主観性を表すものとしてのモダリティ
  3. realis/irrealis(現実相/非現実相)を表すものとしてのモダリティ

1. は英語のモダリティ研究でよく使われているようですが、定義が「必然性」と「可能性」に限定されてしまっていることが難点のようです。

2.については日本語のモダリティ研究の90%以上で使われているようですが、逆にモダリティを広く定義しすぎてしまい、テンス、ヴォイス、アスペクトなどの他の文法範疇も含めてしまうことになるといっていました。

著者のNarrogは3.の立場をとっています。(前紹介した黒滝(2005)と似ています)