臨界期仮説(Critical Period Hypothesis (CPH))とは

臨界期仮説(critical period hypothesis (CPH))とは?

臨界期仮説とは、その臨界期までに言語に接することができなかった場合、言語を習得することが難しいのではないかという仮説です。

臨界期仮説を提唱したのは、Eric Lenneberg (1967)といわれています。

彼は、以下の本で、言語を習得するに有効な時期があるといい、その時期(「臨界期(critical periods)」)を過ぎると、その言語の習得が困難か不可能になるといっているそうです。

  • Lenneberg, E. (1967). Biological Foundations of Language. Wiley

Lenneberg は、母語習得の臨界期は、3歳から5歳ごろと述べているそうです。

 

もともとは第一言語に関する仮説でしたが、その後は第二言語習得についても言われるようになります。

 

臨界期仮説でよく出てくるヴィクトールとジェニーの例

臨界期仮説でよく例に出てくるのは、1799年頃フランスの森で発見されたヴィクトールと、1970年頃カリフォルニアで発見された13歳の少女ジェニーの例です。

 

ヴィクトールは1799年頃、森林を裸で歩いているところを発見されました。推定11~12歳でした。保護された後、ヴィクトールに言語教育を試みましたのですが、言語習得は限られていたそうです。

↑ヴィクトールについては映画にもなっています。

 

ジェニーは、虐待を受けており、11年以上薄暗い部屋に閉じ込められて過ごしていました。1970年頃保護されたときには、身体も知能も未発達でした。保護された後も、言語能力は発達しなかったと言われています。

 

ただ、この2つの特殊な例から臨界期仮説を実証できたと考えるのは難しいと言われています。

 

Seliger (1978)の複数臨界期仮説(Multiple critical period hypothesis)

Seligerは、言語といっても、発音、語彙、文法などに分けられ、それぞれによって臨界期は違うのではと考えました。これを複数臨界期仮説(multiple critical period hypothesis)といっています。

  • Seliger, H. W. (1978)  Implications of a multiple critical period hypothesis for second language learning. In Ritchie, WC, (ed), Second language acquisition research: issues and implications. New York: Academic Press, 11–19.

 

まとめ

臨界期仮説について紹介しました。

臨界期仮説については、存在しないという研究者もいますし、議論はまだ続いているようです。