日本語教育推進法とは?その成立背景とポイントについて

日本語教育推進法とは

日本語教育の推進に関する法律」(「日本語教育推進法」)が2019年6月21日、参院本会議で可決され、成立しました。

国内外の外国人への日本語教育の充実・拡充を促すための法律です。

 

日本語教育推進法の背景

この法律が成立した背景については以下の2つがあげられます。

日本国内における日本語教育の必要性

日本に居住する日本語非母語話者が増加していますし、今後も増加すると考えられます。ただ、日本語教育は現在は地方自治体や受け入れ先の学校・企業が対応している状態で、ボランティア頼りのところも多く、状況の改善が求められています。(参考:「日本語教師の約59%がボランティアの限界―在留外国人の日本語教育担い手不足懸念」アクセス日:2020年2月17日)

海外における日本語教育の必要性

国際交流基金などが海外における日本語教育の普及などを担っていますが、日本という国の立場から、文化政策としてさらに海外の日本語教育の普及が望まれると考えられます。さらに、継承語学習者のように、日本にルーツを持つ子どもなどに対する日本語教育のニーズも高まっています。

これらの背景から、超党派衆参議員による日本語教育推進議員連盟を中心に、この法案が進められました。

 

日本語教育推進法の第1条(目的)でも、法律の背景として以下のような記載があります。

  • 我が国に居住する外国人が日常生活及び社会生活を国民と共に円滑に営むことができる環境の整備に資するとともに
  • 我が国に対する諸外国の理解と関心を深める上で重要であることに鑑み…

 

日本語教育推進法のポイント

①基本理念を定めた法である

日本語教育推進法の第1条であるとおり、これは「基本理念」を定め、方向性を示したもので、この法律により具体的な予算がつくなどといった性質のものではないようです。

ただ、日本教育推進にかかわる施策が今後検討されていくと考えられます。

2020年6月には、次年度の概算要求案を作成するため「日本語教育の推進に関する基本方針」の骨子案が固まる予定ですし、今後、日本語教育関係に予算がつけやすくなる可能性は高いです。

 

②責務の明確化

以前は日本語教育はそれぞれの地方自治体に任せていたことが多かったようです。

第4条では国の責務、第5条では地方公共団体の責務、第6条では事業主の責務と、責務を明確化しています。

また第7条ではその連携の強化も述べています。

 

さらに、法制上・財務上の措置等(第8条)や資料の作成・公表(第9条)、基本方針等の作成(第10条・第11条)についても、責任者を記載しています。

 

③対象者

この推進法では、以下の対象者に対する、日本語教育の機会の拡充を定めています。(第12条~第19条)。

  • 国内の日本語教育
    • 外国人等である幼児、児童、生徒(第12条)
    • 外国人留学生(第13条)
    • 外国人等である被用者(第14条)
    • 難民(第15条)
  • 海外の日本語教育
    • 海外における外国人等(第18条)
    • 海外に在住する邦人子等(第19条)

 

ちなみに、第19条の見出しは「海外に在住する邦人の子等」ですが、本文では、「海外に在住する邦人子、海外に移住した邦人子孫等」と記載されています。

これについては、日本語教育推進法の原案では「在留邦人の子等」と記載されていたようですが、継承語教育関連者を中心とした署名活動により、上記のように変更になりました(参考:「MHB学会海外継承日本語部会:日本語教育の推進に関する法律案の改訂版が公開」アクセス日:2020年2月17日)

 

また、幼児期・学齢期の児童・生徒については、日本語教育は「家庭における教育等において使用される言語の重要性に配慮して行わなければならない(第3条第7項)と記載されており、母語に配慮する必要性についても言及があります。

成立までの経緯について知りたい方は神吉宇一の「日本語教育の推進に関する法律案」(アクセス日:2020年2月17日)もご覧ください。

 

④総合的な取り組み

日本教育については、文化庁が地域住民、文部科学省が児童、外務省が海外における日本語教育を担当するなど分断がありました。

 

この推進法では国がこういった機関の調整を行い、総合的に検討していくことを定めています。

 

第27条では以下のように規定されています。

  • 政府は、関係行政機関相互の調整を行うため、日本語教育推進会議を設ける
  • 関係行政機関(文部科学省・外務省等)は、日本語教育推進関係者会議を設ける

 

まとめ

日本語教育推進法について背景と内容について簡単に記載しました。

国家資格「公認日本語教師」(仮称)が2020年度以降に創設される見通しにもなりましたし、今後も日本語教育関連で変化がありそうです。