Dörnyeiの新しいモチベーションの概念「Directed Motivational Currents」について

Zoltán Dörnyeiのモチベーションに関する研究

何度かDörnyeiのモチベーション研究について紹介しました。

 

最近は「Motivational currents(モチベーションの流れ)」というものを提唱しているようで、それについての講演を視聴しました。

  • Dörnyei, Zoltán. Motivational Currents in Language Learning. BALEAP PIM – Process and Practice in EAP. November 14th 2015. Arts Tower, The University of Sheffield.

Directed Motivational Currents(DMC)とは

時間も忘れるぐらい何かに没頭してしまったという経験がある人は多いと思います。

こういったエネルギーがあふれ出る期間は、頻繁に起こるわけではなく、短期間なことが多いです。

このようにモチベーションが海流(currents)のように流れ出ることを「Directed Motivational Currents(DMC)」(方向性のあるモチベーションの流れ)と呼びました。

 

上記に述べた通り、DMCは頻繁に起こるわけではないのですが、DörnyeiはこのDMCを観察することは非常に重要だと言っています。

 

なぜなら、長期間のモチベーションについても原則は同じことが言えると考えられるからです。

DMCというのは、モチベーションが最高値に達したときの行動と考えられます。

 

つまりDMCを知ることは、長期的なモチベーションの維持・向上にも資するのではないかということだと思います。

 

DMCの要素

DMCの側面として以下のようなものを挙げています。

  1. 目標・ビジョン志向
  2. きっかけとなる出来事
  3. 促進する仕組み
  4. ポジティブな感情

 

目標・ビジョン志向

この前の講義でもDörnyeiは「ビジョン」の大切さを述べていましたが、DMCには一定の目標やビジョンがあります

目標・ビジョンがあるからこそ、一定の方向に一貫して力を注ぎ、エネルギーを集中することができます。

 

きっかけとなる出来事

高いモチベーションを引き出すためには、きっかけとなる出来事が必要となります。

例えば、1つ足りなかった情報が見つかったりとか、行動に移すチャンスが得られたりなどがあげられます。

批判されたりすることも、やる気を引き出す誘因になることもあります。

 

促進する仕組み

このモチベーションの流れというのは、様々な仕組みを通して、維持・強化されていきます

特に一番重要な促進する仕組みは、ルーティーンと進捗の確認です。

 

英語学習をするときにも、「英語ニュースを聞く」というルーティーンを作ってしまうと、「英語を頑張ろう」とその都度思わなくても、モチベーションをもった行動を続けることができます。

モチベーションを自動操縦しているようなものだとDörnyeiはいっていました。

 

また小さな目標を作って進捗を確認することなども必要といっています。

 

ポジティブな感情

一連の行動に喜びを感じるなど、ポジティブな感情を持っていることもDMCの特徴としてあげられます。

 

 

もっと興味のある方は

上記の4つの側面をうまく作り出せるようにすると、長期的にもモチベーションを維持・促進できるということかと思います。

 

上記の内容については、以下の本に詳しく記載されているそうです。

  • Dörnyei, Zoltán, Alastair Henry, and Christine Muir. Motivational currents in language learning: Frameworks for focused interventions. Routledge, 2015.