認知言語学の第二言語教育への応用に関するBoers (2012)の講演を視聴しました。

以下のという題の Frank Boersの講演を視聴しました。

  • Applications of Cognitive Linguistics to L2 Pedagogy

2012年にソウルの淑明女子大学校で行われた「KOTESOL International Conference」での講演です。

この講演では、タイトルのとおり、認知言語学の知見を第二言語教育に応用するという趣旨で、主に語彙の記憶法について説明していました。

例えば、この前の概念メタファーを利用して(詳しくはこちら)、よく「学習」は「食事」と捉えられることが多いことに注目し、digest/swallow information(情報を吸収する/飲み込む)などの表現をまとめて覚えさせたり、「怒り」が「熱」と結びつきやすいことに着目し、「simmer down(静まる)」「blew up(爆発する)」「fuel to the fire(火に油を注ぐ)」などの怒りの表現を熱と結びつけて覚えさせると、ただ「simmer down」をただの単語として覚えるよりも、学生側に覚える意欲がわき、記憶が定着しやすいといっていました。

また、イディオムを勉強するときも、ただイディオムとして学ぶのではなく、そのもともとの意味を理解させると、定着しやすいそうです。例えばjump off gunというのは「早まった行動をする」という意味のイディオムらしいのですが、もともとは陸上競技でピストルが鳴る前に出て行ってしまうというところから来ているらしいです。Boers自身の研究によると、こうやってもともとの意味を説明するだけで、記憶が促されたといっていました。

それ以外にも最近の研究では、英語ではよく同じ音韻の反復がイディオムに使われるらしく(wear and tear, near and dear, dim and distantなど)、こういった事実に着目させるだけで、学生の記憶率が変わるといっていました。

Boers自身も言っていましたが、こういった研究成果は言語教育の一部の場面でしか使えないものかもしれません。ただ、実際に教えていると、語彙を記憶できるかどうかはかなり言語教育で重要なので、日々の生活でちょっとした工夫をしてみようという気持ちはなりました。

  • De Knop, Sabine, Frank Boers, and Antoon De Rycker, eds. Fostering language teaching efficiency through cognitive linguistics. Vol. 17. Walter de Gruyter, 2010.