アイデンティティと「インベストメント(Investment)モデル」に関するDarvin & Norton (2015)を読みました。

Bonny Nortonについては随分前に少し紹介しました(記事はこちら)。
応用言語学におけるアイデンティティー研究の第一人者ともいえる学者です。

  • Norton, Bonny. Identity and language learning: Gender, ethnicity and educational change. Editorial Dunken, 2000.

2013年にはおそらく上記の本を発展させた以下の本を上梓しています。

  • Norton, Bonny. Identity and language learning: Extending the conversation. Multilingual matters, 2013.

 

今回はそのBonny Nortonが共著した、以下の論文を読みました。

  • Darvin, Ron, and Bonny Norton. “Identity and a model of investment in applied linguistics.” Annual review of applied linguistics 35 (2015): 36-56.

この論文では、「インベストメント」という概念がアイデンティティ研究でも有用なのではないかといっていました。

Darvin & Nortonは、この「インベストメント」という言葉を使うことにより、アイデンティティが時・場所によって変化しうること、そして対話の中で再構築されることがとらえやすくなると言っていました。

「学習者に言語を学ぶモチベーションがあるか」に加え、「学習者が言語学習に自らを投資(invest)しているか」、つまり実際に時間・お金等を費やしているかを問うことが必要とのことです。

こうすることにより、モチベーションがあったとしても、クラスになじめなくて実際にはクラスにはいかなくなるケースなど(つまりモチベーションはあるが「投資」はしていないケース)にも対処できるといっています。

この論文では「インベストメント・モデル(Model of investment)」も提示していて、「インベストメント」は、「イデオロギー」、「資本(キャピタル)」、「アイデンティティ」の3つが重なりあうところに存在するものだといっていました。

実際にこのモデルをどう分析などで使えるかはちょっとよくわかりませんでしたが、他にも関連の論文が出ているようなので、機会があれば読んでみようかと思います。