「リンガフランカとしての英語」とは何か?なぜ英語はリンガフランカの地位を得たのか?

参考にした本

「リンガフランカとしての英語(English as a lingua franca)」について調べてみました。

  • Jenkins, Jennifer. Global Englishes: A resource book for students. Routledge, 2014.

↑参考にしたのはこの本です。この本は学生のための参考書で、国際共通語としての英語(Global Englishes/World Englishes)についての議論などを(おそらく学部生用に)わかりやすくまとめています。

 

著者のJenkinsはリンガフランカとしての英語について幅広く執筆しています。

リンガフランカとしての英語(English as a lingua franca (ELF))についての参考文献を少し調べてみました。

↑こちらに参考文献も少し紹介しています。

 

リンガフランカとしての英語とは何か

「リンガフランカ」というのはもともとは「フランク王国のことば」という意味のイタリア語だそうですが、今は共通語をもたない人々がコミュニケーションをするときに使われる言語という意味で使われます。

昔はサンスクリット語や、ギリシャ語、ラテン語、ポルトガル語などがリンガフランカとしての役割を果たしていました(今も正則アラビア語は、アラブ世界ではリンガフランカとしての機能もあります)

 

正則アラビア語など一部の地域でリンガフランカとして使われる言語はありますが、今の世界では、英語が国際的なリンガフランカとして使われることが非常に多くなっています。

私自身もそうですが、英語母語話者でない人と話すとき、相手が日本語(やその他私がある程度知っている言語)を話さない限り、英語でコミュニケーションをとることが多いです。

 

リンガフランカとしての英語研究で著名なSeidlhoferは、「リンガフランカとしての英語」を以下のように定義しています。

 

“any use of English among speakers of different first languages for whom English is the communicative medium of choice, and often the only option” (Seidlhofer 2011: 7) 

第一言語が異なる話者の間での英語の使用のこと。英語がコミュニケーションの媒体として選択され、英語が唯一の共通言語のことが多い。

 

リンガフランカとしての英語はEnglish as a lingua francaの頭文字をとって「ELF」と言われることもあります。

 

なぜ英語がリンガフランカとしての地位を持つようになったのか

なぜ英語がリンガフランカとしての地位を持つようになったのかについては、上記の「Global Englishes」の本のp. 43-44で以下のように書かれています(Crystal 2003, cited in Jenkins 2014, p. 43-44)。

特に後半の「学術的理由」や「エンターテイメント上の理由」などは、理由というより、英語が影響力を持つようになった「結果」としての側面も大きい気がしますが…。

  • 歴史的理由

英国・アメリカの帝国主義の影響で、政府や地方公共団体、裁判所などの書類手続きが英語でなされる国が多いから

  • 国内の政治的理由

インドのように異なる民族グループの中立なコミュニケション手段として、英語が選ばれることがあるから。「インド英語」のような英語の変種が、国内の異なる民族を統一するシンボルとして使われるケースもある。

  • 外部の経済的理由

アメリカが経済的に大きな影響力を持ち、国際的ビジネスに多大に影響を与えているから。国際的なマーケットを開拓したい会社は、英語で業務を行うプレッシャーがある。

  • 実務的理由

英語は国際航空管制の言語で、それ以外も国際的なビジネス、学術会議、ツーリズムなどでもメインの言語となっているから。

  • 学術的理由

ほとんどの科学技術や学術情報は英語で書かれている。インターネット上に保存されている学術情報の80%以上が英語。

  • エンターテイメント上の理由

ポップミュージック(特にヒップホップ)やポップカルチャーの主要な言語になっている。

  • 個人的な利点

多くの文化で、英語が話せることが個人的な地位を高めることになる。

 

ちなみに、最後の「個人的理由」以外は、下記のCrystal (2003, p. 107)の本に詳しく記載されているようです。

  • Crystal, D. (2003b) The Cambridge Encyclopedia of the English Language . 2nd edn. Cambridge: Cambridge University Press.

 

なお、他の言語と比べて「英語が論理的な言葉/美しい言葉だから」とか「発音が簡単だから」「文法が簡単だから」など言語的な理由を挙げることがありますが、それは関係ないと述べています。

まとめ

「リンガフランカとしての英語(English as a lingua franca)」とは何かということと、なぜ英語がリンガフランカに今なっているのかについて記載しました。

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