「~たら」「~ば」「~と」「~なら」「~場合」の違いについて

条件を表す表現

日本語は条件を表す表現が複数あり、その使い分けはなかなか難しいので、まとめてみます。

 

主に参考にしたのは、「日本語類義表現と使い方のポイント―表現意図から考える―」(p. 210-220)です。

  • 市川保子(2018)「日本語類義表現と使い方のポイント―表現意図から考える―」スリーエーネットワーク

この本では、条件表現の違いについて、ポイントに分けて詳しく説明されているので、興味のある方はそちらもご参照ください。

 

また、この本では、よく学習者からも違いを聞かれるような、様々な類義表現の使い分けが記載されているので、重宝しています。

 

「~たら」の特徴

「たら」は、用法が広く、実現性の高いケース・低いケースのどちらにも使われます。

  • 100万円もらったら、旅行に行きます
  • 雨が降ったら、試合は中止です。
  • 熱があったら、休んでください。

また、「たら」は会話でよく使われます

「たら」の後の後文は、以下のように働きかけの文もくることができます。

  • 100万円もらったら、旅行に行こう
  • メールが届いたら、教えてください。
  • 使える範囲が広い
  • 会話的な表現

 

「~ば」の特徴

「~ば」も「たら」と同様、実現性の高いケース・低いケースのどちらにも使われます。

ただ、「春になれば、桜が咲きます」のように、「~ば」というのは、基本的にずっと成り立つような、一般的な条件を言うときに使うことが多いです。

また「たら」よりも改まった表現です。

ことわざでも「~ば」がよく使われます。

  • ちりもつもれば山となる
  • 三人寄れば文殊の知恵
  • 噂をすれば影

 

  • 一般条件(客観的な叙述)で使われることが多い
  • やや丁寧で、改まった言い方

 

「~と」の特徴

「~と」は「必ず起こる」というニュアンスで使われ、ほぼ確実に起こる事柄に使われます。

  • 角を曲がると、デパートがあります。
  • スイッチを押すと、電気がつきます。

そのため、実現性の低い場合は使われません

  • × 100万円もらうと、旅行に行きます。
  • × 雨が降ると、遊びに行きません。

 

また、後文に働きかけの表現も来ません。

  • × 角を曲がると、まっすぐ歩きましょう。
  • × 教室に入ると、電気をつけてください。

 

  • ほぼ確実に起こる事柄に使う
  • 後文に働きかけの文は使えない

 

「~なら」の特徴

「なら」は仮定性の強い表現です。「たぶんできないけど、仮にできるんだったら」というニュアンスで使われることが多いです。

  • 宝くじがあたったなら、旅行に行きたい。
  • あのチームに勝てるなら、どんなしんどい練習でも頑張る。

なので、実現性が高い場合は使いません

  • × 春になるなら、桜が咲きます。

上記の文だと「春になるかわからないけど、もしなるなら」というニュアンスになってしまいます。

 

後文に「~しよう」などの意向文や「~ください」などの働きかけの表現を使うこともできます。

 

  • 実現性の低い事柄に使う

 

「~場合」の特徴

「~場合」は少し客観的な表現で、「何かが起こったとき」というようなニュアンスで使われます。

  • 雨の場合は中止です。
  • 地震が起きた場合は、机の下に隠れてください。

この場合、「雨のとき」「地震のとき」という意味合いに近いです。

また、やや硬い表現でもあります。

  • 客観的でやや硬い表現

 

ご興味のある方は

条件表現についてまとめてみました。

こうやって書いたものの、条件表現については個人差・地域差などもあると言われています。

日本語条件表現について詳しく知りたい方は、以下の本などが役に立つと思います。

  • 有田節子(編) (2017). 『日本語条件文の諸相 ―地理的変異と歴史的変遷』くろしお出版