アクティブ・ラーニングとは何か

アクティブラーニングとは

アクティブ・ラーニングは、能動的学修ともいわれます。

 

2012年8月28日に文部科学省の中央教育審議会が「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~(答申)」で使ってから、着目を浴びました。

 

上記の答申では、以下のように、大学教育でアクティブ・ラーニングへの転換が必要と明記されています。

 

従来のような知識の伝達・注入を中心とした授業から、教員と学生が意思疎通を図りつつ、一緒になって切磋琢磨し、相互に刺激を与えながら知的に成長する場を創り、学生が主体的に問題を発見し解を見いだしていく能動的学修(アクティブ・ラーニング)への転換が必要である。(p. 9)

 

同じ答申に添付されている用語集では、以下のようにアクティブ・ラーニングを定義しています(赤字はこちらが追加)。

教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称学修者が能動的に学修することによって、認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図る。発見学習、問題解決学習、体験学習、調査学習等が含まれるが、教室内でのグループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワーク等も有効なアクティブ・ラーニングの方法である。

 

一方的に知識を伝達する講義形式とは違い、学習者が能動的に学習に取り組めるような教授・学習法ということですね。

教室活動の例としてはグループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワークがあげられています。

 

アクティブ・ラーニングの背景

横溝(2016)『日本語教師のためのアクティブ・ラーニング』(p. 8-12)によると、アクティブラーニングが登場してきた社会的背景として、社会構造の変化による求められる人材の変化があるようです。

 

社会構造は「農業社会→産業社会→知識基盤社会」と変わってきました。

産業社会だと、与えられた仕事をきっちりこなせる人材を生み出すことが、教育の主な目的でした。

ただ、現在の知識基盤社会では、知識・技能の習得だけでなく、未知の状況にも対応できる思考力・判断力・表現力等の養成や、学びに向かう力・人間性を養う必要性も高まっています。

知識・技能を教えるだけでなく、「課題解決」「協働」「価値の創造」「リーダーシップ」など、「資質・能力」を育てる授業に意識をチェンジすることが必要になり、アクティブラーニングが脚光を浴びるようになったようです。

 

個人的には、産業社会で「与えられた仕事をきっちりこなせる人を育成することに、教育の主な目的」が置かれていたかどうかは要検討だと思いますが、時代の変化にともない、教育で重視する点が変わってきたという事実はあると思います。

 

 

アクティブ・ラーニングのその後

2012年の答申後、アクティブ・ラーニングは大学教育だけでなく、幼小中高の学習指導要領にも影響を及ぼすようになります。

 

ただ、上記の文部科学省が提示したアクティブラーニングの定義に、グループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワークが含められていたため、アクティブ・ラーニングはディスカッションやディベートをすることという誤解も生まれたようです(横溝 2016, p. 20)。

 

それもあってか、平成 29・30 年学習指導要領では、「アクティブ・ラーニング」という用語は使われず、代わりに「主体的・対話的で深い学び」と言い換えされています。

 

文部科学省の『平成29・30年改訂学習指導要領のくわしい内容』を書いたページでは、以下のように記載されています(アクセス日:2020年12月18日)。

主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)の視点から「何を学ぶか」だけでなく「どのように学ぶか」も重視して授業を改善」とありますね。

 

 

アクティブ・ラーニングの特徴

上記のとおり、アクティブ・ラーニングの特徴としてあげられるのが、「主体的・対話的で深い学び」です。

 

この主体的・対話的で深い学びというアクティブ・ラーニングの特徴について、横溝(2016, p. 24-31)を参考に記載します。

 

主体的な学び

主体的な学びとは、学習者自身が積極的に興味・関心を持って取り組むことです。

また、ただ闇雲に取り組むのではなく、自らの学習状況やキャリア形成についても振り返ったり見通したりするといった、自らの学びのプロセスを理解していることも含まれます。

 

  • 「学ぶことについての積極性」と「自らの学びのプロセスの認知」が含まれる
  • 教師ではなく学習者がほとんどの作業をしている。

(横溝 2016, p. 27)

 

 

対話的な学び

対話的な学びとは、他者との対話を通して、自分の見解を深めたり、新たな視点に気づくことが含められるようです。

  • 他者とのやりとりによって、「主体的な学び」の実現につながる。
  • 「対話」によって、物事に対する、より深い理解が生まれやすくなる。

(横溝 2016, p. 28)

 

深い学び

深い学びとは、学んだことを活用して、問いを見出して解決したり、自己の考えを形成したり、思いや考えをもとに意味や価値を創造していくことが含まれます。

  • 関連付け・原理追求・批判的検討を行う、俯瞰的・包括的な学びである。
  • 活動のタイプに関わらず、熱中して取り組んでいる時に生じる学びである。

(溝上 2016, p. 31)

 

まとめ

アクティブ・ラーニングについてまとめました。

今回の記事を書くにあたって参考にしたのは、以下の本です。

  • 横溝 紳一郎, 山田 智久(2019) 『日本語教師のためのアクティブ・ラーニング』くろしお出版

アクティブ・ラーニングとは何かという説明だけでなく、アクティブ・ラーニングの視点からの日本語クラスの授業改善のヒントなどもあり、参考になります。