現場の教授・講師ではcritical thinkingをどう捉えているか調査した論文を読みました。

前記事に引き続きcritical thinkingについてです。Studies in Higher Educationというジャーナルに載っていたMoore (2013) Critical thinking: seven definitions in search of a conceptを読みました。

彼のことは知らなかったのですが、critical thinkingで以下のような本も出しているみたいです。

  • Moore, Tim John. Critical thinking and language: The challenge of generic skills and disciplinary discourses. Bloomsbury Publishing, 2011.
Moore(2013)によると、Critical thinkingは大学レベルでよく求められるものの、何をもって「critical thinking」というのかは結構直感的なものに頼っている場合が多いと言われているそうです。

この論文で、Mooreは、哲学者ウィトゲンシュタイン(Wittgenstein)の「ある概念について考えるのではなく、ある概念がどう使われているかを見よ」という考えに基づき、オーストラリアの大学で哲学、歴史、リテラシー/文化研究を担当する教授・講師17名にインタビューを行い、彼らがどのようにcritical thinkingを捉えているかを調査しています。

その結果、(a)判断すること(judgment)、(b)懐疑的であること(skepticism)、(c) オリジナリティーを出すこと、(d) 丁寧に文献を読むこと(sensitive reading)、(e) 合理的であること、(f) 倫理観を持ち社会に働きかけていること、(g) 自己内省していること(self-reflexivity)などを、現場の教授・講師は、critical thinkingの要素として考えていることが分ったそうです。

Mooreは、何をもってcritical thinkingというのかはかなり曖昧と言われているが、少なくとも彼の研究対象である現場の教授・講師は明白な概念を自分で考えていたこと、そして、前記事で述べたようないわゆる狭い意味でのcritical thinkingではなく、広い意味でcritical thinkingを捉えていることが分かったと言っています。また、人によって解釈はかなり違ったとも報告しています。