ゲシュタルト(Gestalt)とは何か

ゲシュタルトとは

ゲシュタルト(Gestalt)とはドイツ語で「形の全体像」という意味です。

ゲシュタルトというと、「全体は還元された部分の総和ではなく、それとは別のものである」とよく定義されます。

 

20世紀初頭にマックス・ヴェルトハイマーなどによって提唱されたゲシュタルト心理学の基本概念にもなっています。

このゲシュタルト心理学は、認知言語学に大きな影響を与えていますし、認知言語学以外の応用言語学系の論文でも、でてきたりします。

 

 

例1 点線 (参考:籾山 2006, p. 111)

例えば以下のようなものがあります。

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みなさんはこれを見てどう思うでしょうか?

「点が100個あるな」と思うでしょうか。それとも「点線」と思うでしょうか。

 

点線として「線」を知覚する人が多いのではないでしょうか。

 

点という構成部分のかたまり(=「還元された部分の総和」)ではなく、全体でみて「線」という「別のもの」を認知したわけです。

 

例2 パラパラ漫画

ゲシュタルトの他の例は、パラパラ漫画です。

 

パラパラ漫画は、いくつもの絵で構成されています。

パラパラ漫画を見るときに、分割された一つ一つの絵をまとめたものと考えるのではなく、全体を見て、(一枚一枚の絵だけを見ていただけだと存在しえないはずの)一連の動きやストーリーを感じるのではないでしょうか。

「還元された部分の総和」(=個別の絵のかたまり)ではなく、全体を「パラパラ漫画」という「別のもの」として認識したわけです。

 

ちなみに

ちなみに、ゲシュタルトについては「全体は還元された部分の総和ではなく、それ以上のものである」といわれることもあります。

ただ、これはこの概念がドイツ語から伝わるときに誤って伝わったものだそうです。

全体は、部分の総和「以上のもの」ではなく、部分の総和とは「別のものである」というほうが正確だそうです(TipTut 2018)。

 

ゲシュタルトの法則

上記のとおり、我々は、個々の情報ではなく、体として把握しようとします(あたりまえといわれたら、当たり前のことなのですが)。

 

複雑な要素から構成されるものを、それそのままで知覚するのではなく、簡略化したり体系化したりして、全体として知覚しようとするのです。この知覚の特性を「ゲシュタルト知覚」といいます。

 

また、全体として知覚するときに、以下のように無意識な体系化の法則がわかっていて、これをゲシュタルト法則ともいいます。

この人間の認知の特性は、デザインでも応用されています。

 

連続(Continuation/continuity)

まず、人は、可能な限り、連続をなすような形でまとまりを知覚します。

 

↑上の点線やパラパラ漫画の例もそうですが、要素の間に連続性を見出そうとします。

 

類似(Similarity)

形態が類似しているものはまとまって認知されます。

↑この絵には9の動物がいます。

ただ、1つ1つの個体を個別のものとして認知するのではなく、形態の似ている豚を1つのグループ、形態の似ている猫を別のグループとして認知しやすいです。

 

 

近接(Proximity)

近くに集まっているものは集まって認知されます。

↑この絵には、11の動物がいます。

ただ、1つ1つの11の動物を別々にとらえるということはせず、近くに集まっている動物たちを1グループとみなし、4つのグループがあると認知する傾向にあります。

 

閉合(Closure)

空間が閉じていれば、まとまりとして認知します。欠けている情報は補完して、全体として認識します。

 

この絵は、7本の曲線の集まりでもあるのですが、多くの人が欠けている部分を補完して、「円」というまとまりで認知するのではないでしょうか。

 

相称(Symmetry)

左右対称な図形は、セットとして認識します。

右と左が対称なものは、何らかの形で関連している、と認知します。

 

図(figure)と地(ground)

何かを見るときに、ある部分を際立ったものとして知覚し、それ以外には意識はほとんど向きません。

例えば、サッカーの試合を見るときは、選手の動きに目が行きがちで、その後ろの芝生の状態には注意が払われないことが多いです。

 

この重要な部分(際立った部分)を「図(figure)」、そうでないものを「地(ground)」といいます。

「図」に意識が向き、背景である「地」にはほとんど意識が向きません。

 

この「図」と「地」を説明するときによく使われるのがルビンの壺です。

壺の部分を「図」として捉えると、黒い部分は「地」になります。逆に、人の横顔を「図」として捉えると、薄黄色の部分は「地」になります。

壺と横顔が同時に見えることはなく、人が何かを認知するときに、「図」と「地」にわけて捉えていることがわかります。

 

認知言語学におけるゲシュタルト

認知言語学では、一般的な認知能力が言語や言語習得・使用の基盤になると考えます。

ゲシュタルト知覚も人間の一般的な認知能力の一つで、認知言語学でも重要な概念になります。

 

例えば、合成語は一つのゲシュタルトであると考えられます(籾山 2006, p. 111)。

「花束」「焼き鳥」「酒飲み/湯飲み」などの合成語は、「花」・「束」、「焼く」・「鳥」、「酒」「湯」「飲む」構成要素の意味の総和からだけは導けない意味を持っていると考えられます(籾山 2006, p. 111)。

確かに「湯」を「飲む」という個別の意味を足しても、「飲むときに使う器」という「湯のみ」の意味が出てくるわけではないですね。

 

また、「図」や「地」という概念も認知言語学に「プロファイル」と「ベース」という形で受け継がれています(籾山 2006)。

 

まとめ

ゲシュタルトについて簡単にですが紹介しました。

今回の記事を書くにあたって参考にしたのは以下です。

↑短い動画(英語)で、わかりやすいです。ゲシュタルトの法則の例が、会社のロゴで紹介されていてわかりやすいです。

 

  • 籾山洋介. 日本語研究のための認知言語学. 研究社, 2014.

↑認知言語学の入門書です。読みやすくてわかりやすいです。