古典的カテゴリー観、プロトタイプ理論、事例理論(exemplar theory)のカテゴリー観の違いついて

カテゴリー化

多種多様な物事をカテゴリーに分類するというのは、人間の認知に深くかかわっています。

 

この絵は何の絵でしょうか?

犬ですね。

 

この絵は何の絵でしょうか?

猫です。

 

私たちは「犬」と「猫」を別のカテゴリーとみなし、区別しています。

上の絵を見たのは初めてという人が多いと思うのですが、「犬」と「猫」と認識できるのはどうしてでしょうか。

でも、どうやって我々はこのようなカテゴリーを作っているのでしょうか。

 

カテゴリー化について、以下の3つの考え方を今回の記事では紹介します。

 

3つの考え方
  1. 古典的カテゴリー論(classical categorical view)
  2. プロトタイプ理論(prototype theory)
  3. 事例理論(exemplar theory)

 

古典的カテゴリー観(classical view)

古典的カテゴリー観では、それぞれのカテゴリーの成員に共通する特性があり、共通特性をすべて満たしていればそのカテゴリーに含まれると考えます。

犬の場合、「犬らしさ」のルール(条件)があり、その条件を満たしている場合、我々はそれを「犬」とみなすというものです。

満たしていない場合は「犬」とは認められません。

 

例えば、「犬らしさ」の条件としては以下のようなものが考えられます。

  1. しっぽがある
  2. 四本足で歩く
  3. 全身が毛で覆われている
  4. ワンワンと吠える

 

上記のようにチェックリストのように条件があり、それをすべて満たしていると「犬」として認めるというものです。

猫の場合、上記の1~3は満たしていますが、「4. わんわんと吠える」は満たしていないので、「犬」とは認められません。

この必要条件を我々は育っていく中で、徐々に学んでいくと考えます。

このカテゴリー観では、カテゴリー間の境界ははっきりしていて、カテゴリーの中のメンバーは均等であると考えられます。

 

 

古典的カテゴリー観の問題

ただ、このカテゴリー観には問題があります。

一番大きな問題は、カテゴリーに共通する特性を定義することができないということです。

 

「犬らしさ」の条件として上記で挙げた「しっぽがある」「全身が毛でおおわれている」というのも、あてはまらない犬もいます。

↑これはチャイニーズ・クレステッド・ドッグですが、ヘアレス犬種として有名です。

あるカテゴリーの必要条件を定義するのは非常に難しいです。

 

プロトタイプ理論

プロトタイプ理論(prototype theory)は上記の古典的カテゴリー論への批判から、生まれました。

ヴィトゲンシュタイン(Wittgenstein) (1953)のゲームに関する考察がその端緒になったといわれています。

 

プロトタイプ理論は、典型的な例(プロトタイプ)とそれとの類似性によって特徴づけられるという考え方です。

例えば、今、皆さんが「犬」を思い描いてみてくださいと言われたら、どのような犬を思い浮かべるでしょうか?

↑こんな犬でしょうか?

 

みなさんが思い描いた犬は、皆さんの頭の中の犬らしさを抽出した絵(=典型的な例)、つまり「プロトタイプ」と考えられます。

 

皆さんが思い描く犬に多少違いはあるとは思うのですが、たぶん下記のような犬を考えた人はほとんどいないのではないでしょうか?

↑ライオンのような犬で有名なチベタン・マスティフです。

 

 

プロトタイプ理論では、新しい犬に出会った時は、以下の図のように、自分の中のプロトタイプと似ているかどうかで、カテゴリーを判断すると考えます。

 

プロトタイプ理論では、「犬」だからといって、古典的カテゴリー観のように、すべての犬が共通の特性を持っている必要はなくなります。

重要なのは、プロトタイプに類似しているかどうかです。プロトタイプと類似しているものは、中心円に近く、遠いものは周縁の成員になります。

なお、プロトタイプと類似していればカテゴリー化の判断しやすくなります。

チャイニーズクレステッドドッグやチベタン・マスティフはプロトタイプとあまり類似してないため(これらの犬に親しみがある人以外は)、周縁部に位置していると考えられ、カテゴリーの判断に迷ったり、時間がかかったりします。

 

つまり、カテゴリー間の成員の間に差があります。また、カテゴリーの境界線もあいまいになります。

 

 

プロトタイプ理論の問題

プロトタイプ理論の問題として、プロトタイプと全然似ていないものでも、そのカテゴリーとして認めるのはなぜかという点があげられています。

例えば、「ペンギン」は「鳥」というカテゴリーに入りますが、プロトタイプの鳥とは全然似ていません。

プロトタイプとの類似性で判断するなら、カテゴリーに入らなくなってもおかしくなさそうなのに、なぜカテゴリーに入れるのでしょうか。

 

 

事例理論(exemplar theory)

プロトタイプ理論は、あるカテゴリーについて抽象化された例があるイメージでした。

 

ただ、研究では、人間は、抽象化された典型的な例(プロトタイプ)だけでなく、抽象化されていない、個別の事例を記憶していることがわかっているそうです。

事例理論(exemplar theory)(または事例モデルともいわれます)では、プロトタイプ理論のように抽象化された典型的な事例があるのではなく、記憶の中にある個別の事例との比較によってカテゴリーを認識すると考えます。

 

↑この図のように、今まで出会ってきた犬の事例が頭の中に記憶されていると考えます。

 

新しい犬に出会った時、従前の個別の事例についての記憶と比較するか、従前の事例の中の一番近い事例と比較することでカテゴリーと認識すると考えます。

また、類似点を探すときには、その事例の全体と比べるのではなく、「大きさ」や「耳の長さ」などいくつかの点を選択して比較していると考えます。

 

プロトタイプ理論では周縁部に位置されていた成員でも、その成員と類似の事例が記憶の中にあれば、カテゴリーを判断できるようになります。

 

事例理論の問題

この事例理論は、個別の事例が記憶にあると考えるので、これらの事例をどう一般化していくのか、そのプロセスがはっきりしていないとも言われています。

 

 

まとめ

カテゴリー化に関する考えについて、古典的カテゴリー観、プロトタイプ理論、事例理論(exemplar theory)の3つを見てきました。

 

カテゴリーについて情報が少ないときは、個別の事例との類似性で比べる事例理論、カテゴリーについて既に多数の情報を持っているときは、プロトタイプ理論というふうに、複数の理論を組み合わせるものもでてきているようです。

他にも、類似性によらない理論ベースのアプローチなどもあるようです。詳しく知りたい方は認知心理学の本をあたるといいかと思います。

 

  • 箱田 裕司他(2010)『認知心理学 (New Liberal Arts Selection)』 有斐閣

 

 

なお、この記事を記載するときに主に参考にしたのは以下の本の第4章です。

  • Levering, Kimery R. und Kurtz, Kenneth J.: Concepts: Structure and Acquisition, in: Sternberg, Robert J. und Funke, Joachim (Hrsg.): The Psychology of Human Thought: An Introduction, Heidelberg: Heidelberg University Publishing, 2019, S. 55-69.