「トランスレーション・スタディーズ」読了。この分野の扱うトピックの幅広さを改めて実感しました。

佐藤=ロスベアグ(編)(2011)の「トランスレーション・スタディーズ」を読みました。

  • 佐藤=ロスベアグ・ナナ編. トランスレーション・スタディーズ. みすず書房. 2011

Translation studiesは1970年代頃から西欧で盛んに研究されるようになった分野で、日本語では翻訳学と訳されることが多いようです。ただ、編者の佐藤=ロスベアグは西欧で展開しているtranslation studiesは通訳領域も含まれるなど、「翻訳」という訳語とカバーする範囲が異なると指摘し、あえてトランスレーション・スタディーズとカタカナ書きで使用していました。

この本は、ヘルマンス・テオの「翻訳者、声と価値」という題の全般に関する論文と、トランスレーション・スタディーズを日本の文脈で考察した12本の論文から構成されてます。12本の論文は3本ごとに、「江戸から大正期の翻訳までの翻訳と翻訳者」、「世界文学としての日本文学」、「文化の翻訳/実践としての翻訳」、「コミュニティ通訳」の4章に分けられていました。章題からもわかるように幅広いトピックを扱っていて、研究対象も、福沢諭吉から村上春樹、アイヌの口頭伝承、テレビゲーム、日系ディアスポラ(日系カナダ人)、コミュニティ通訳、法廷通訳と様々でした。

いわゆるTranslation Studiesもかなり幅広いトピックを扱っているので、全体としてそのTranslation Studiesの幅の広さが分かる構成にもなっています。トピックもある程度馴染みのあるものが多かったからか、読みやすかったです。個々の論文でメモしたいところもいくつかありましたが、また今度、時間があったらにします。