前読んだ「異文化コミュニケーション学への招待」の中の気になる章をメモしておきます。

前紹介した「異文化コミュニケーション学への招待」の中の鳥飼の章についてメモしておきます。

  • 鳥飼玖美子(2011)「持続可能な未来と通訳翻訳学-多様性の視点から-」. 鳥飼玖美子他編『異文化コミュニケーション学への招待』、みすず書房、2011

 

鳥飼は、法廷通訳などの例をあげながら、通訳翻訳学が、上記の本のテーマでもある「持続可能な社会構築」にどう関連するかを述べていました。

医療・法廷の通訳では、通訳サービスを受ける側が社会的弱者や周辺的な存在であることが多く、通訳者が相手をどこまで解釈していいのか等、通訳者の役割、仲介や介入の仕方が課題となっており、異文化コミュニケーションの問題を顕在化するといっています。鳥飼は、翻訳通訳が<多様性をつなぐ>と考え、こういった通訳翻訳についての考察が、コミュニケーションの再考を促し、「持続可能な社会」における多様性の維持につながるといっていました。

翻訳と多様性との関連性については、Cronin (2003, p.72-75)が以下の3点挙げているみたいです。

  • 翻訳は、個々人が手にできるテキストや文化的経験の幅を広げ、異文化や異言語の存在を認識させる役割を果たす。
  • 翻訳は単文化思考でなくて、多様な思考を導入する。人間が学べる言語には限りがあるので、翻訳によって多様な言語の思考を得ることができる。
  • 翻訳は文化的忘却を回避する。翻訳によって他の地域・時代に起こったことを記憶することができ、これが未来に向けて持続するうえで大切な要素となる。