スキーマ理論と読解教育について

スキーマとは

スキーマ(schema)というのは、自分の頭にある、構造化された知識・知識の枠組みのことです。(複数形はSchemataです)

 

 

皆さんは、「レストラン」というと何を思い浮かべるでしょうか。

ある建物の中に椅子があって、テーブルがあって、店員がいて、食事を提供してくれる、そんなイメージを持つ人が多いのではないでしょうか。

 

また、レストランに行くと、料理を注文して、食べて、お会計するという一連の流れがあることも知っています(この典型的な流れについての知識を「スクリプト」といったりもします)

 

これは自分の今まで得た数々の「レストラン」に関する情報や知識、実際の経験(記憶)の塊とも言えます。これをスキーマといいます。

 

頭の中にはこのようなスキーマがたくさんあると言われています。

 

「中国人」「日本人」「アメリカ人」などに対して持つステレオタイプもスキーマの一種です。

 

 

スキーマ理論でよく出される比喩は、キャビネット棚です。

↑自分の頭の中に、その中にいろいろな情報・知識・経験をまとめたキャビネット(スキーマ)がたくさんあるというイメージです。

 

なお、一度できたスキーマを変えるのは難しいと言われています。

 

初期にスキーマを提唱した学者として、よくFrederic C. Bartlett(1886–1969)があげられますが、スキーマ理論が研究対象として盛んになったのは1970年代ごろからです。Rumelhart & Ortony (1977)などがよく引用されています。

 

スキーマ理論

スキーマは、カテゴリーを形成する認知的仕組みといってもいいかもしれませんが、こういった自分の中の知識の枠組みというのは、以下のような役割を果たしています。

 

認知的負担を減らす

新しい状況に出会った時も、既存のスキーマを活性化させることで、認知的負担を減らすことができます。

「レストラン」というスキーマがなければ、新しいレストランに行く度に、何をすればいいかわからず、誰かの助けが必要になるかもしれません。

私たちは「レストラン」という概念を持っていて、そこで何をするかも知っているので、このスキーマを使って、まったく新しいレストランでも食事をし、会計をすることができるのです。

 

また、その新しいレストランの経験が、既存の「レストラン」というスキーマを充実させていきます。

 

一般化する

スキーマを作ることで、私たちは現在の複雑な世界をカテゴリー分けし、一般化し、自分なりに理解していくことができます。

 

なお、上記で、一回作ったスキーマを変えるのが難しいといいましたが、人間は「確証バイアス」というものがあり、自分のスキーマにあった情報を選び、そうでない情報を無視する傾向があることもわかっています。

 

読解教育とスキーマ理論

言語学習の読解教育では、スキーマを活性化させることで、読解が促進されるということが言われています。

 

例えば、日本語の文章を読むときに、「桃太郎のような子」という文があったときに、「桃太郎」がどんな人なのかというスキーマがないと、それによって何を意味するのかわからず、読解が難しくなってしまいます。

 

「お正月」の記事を読むときにも、お正月はどんなもので、何をするのかというスキーマがないと、いくら日本語の文法がわかっても意味がわからなくこともあります。

 

逆に言うと「お正月」が何かをわかっていると、読解は促進されることになります。

 

これは内容の例ですが、内容でなくて構成についても言えます。

日本語の4コマ漫画はよく起承転結の構成になっていることが多いですが、その構成についての知識があれば、次に何が来るかを予想でき読解が楽になると考えられます。

 

↑これは国際交流基金の「読むことを教える」という日本語教師向けの本ですが、ここでは読解指導をするときに、学習者のスキーマを活性化させる重要性が述べられています。

 

まとめ

スキーマ理論と読解教育についてまとめました。

ご興味のある方は以下の本などもお読みください。

  • Carrell, Patricia L., Joanne Devine, and David E. Eskey, eds. Interactive approaches to second language reading. Cambridge University Press, 1988.

Carrellは英語の読解教育とスキーマ理論について多数執筆しています。