日本語学習者にとって「~かなと思う」の習得は難しい?

この記事では、「日本語学習者にとって「~かなと思う」の習得は難しい?」というテーマで、日本語学習者の「と思う」や「かなと思う」の発達について紹介します。

まず、「と思う」の初級日本語教科書での扱いについて比較した後、「かなと思う」の表現の発達について扱った迫田他(2016)の論文を紹介します。

「~と思う」の日本語教育での扱い

「と思う」という表現は日本語教育では初級で必ずといってもいいぐらいでてきます。

3つの初級教科書での「と思う」の説明を見てみます(訳は拙訳です)。

初級教科書は、比較してみると若干文法の説明が違っていたりして、面白いです。

 

1つ目は、「初級日本語げんき[第3版]」です。

” To describe what you think, you use the short form, plus と思います (I think that…)” (p. 192)”
(何を考えているかを記述するために、ショートフォームと「と思います」(I think that…)を使います)

「と思う」が自分の考え・意見をいうものとして紹介されていますね。

 

次に、「みんなの日本語 初級I 第2版 翻訳・文法解説 英語版」です。

と思います is used “1) when expressing conjecture” and “2) when stating an opinion” (p. 134)”
(「と思います」は、1) 推測を示すときと2) 意見を述べるときに使います)

自分の意見を述べる以外に、推測を表すときにも使うと言われています。

「たぶん駅までは30分ぐらいかかると思う」のように不確実なことを言うときにも「と思う」は使われますね。

 

最後は、「まるごと 日本のことばと文化 初級1 A2 りかい 」です。

S states the speaker’s impression, opinion, conjecture, or judgement. S takes the plain form. (p. 162)
(センテンスは、話し手の印象、意見、推測や判断を述べています。センテンスは、普通形を使います。)

「みんなの日本語」と同様、意見や推測を述べるときに使うと説明していますね。

 

いずれの教科書もシンプルにさらっと説明している印象です。

「~と思う」の習得

「と思う」の習得はそれほど難しくないと言われていて、むしろ作文などでは「と思う」を使いすぎてしまう傾向もあるという報告もあります(佐々木・川口 1994)。

 

では、「と思う」については、特に心配しなくていいのかといわれると、実はそうではないと言われています。

例えば、Iwasaki (2009)の研究では、意見をいうときの「と思う」の使用を調べています。

会話を分析した結果、日本語母語話者は「と思います」とシンプルにいうのではなくて、「かなと思うんですけどね」など、前後に和らげ表現を付けたりすることが多かったと報告しています。

 

意見を言ったり、依頼をしたりする場面で、「と思う」の表現が使われることは多いと思います。

ただ、その際には、「かなと思って…」や「~じゃないかと思うんですけど」など、断定を避けるためや、控えめに言うために前後に「かな」や「けど」などをつけることも多いんですね。

 

「~かなと思う」の発達

その中でも、「かなと思う」はよく使われる表現ですが、今回はこの日本語学習者の「かなと思う」の発達についての以下の論文を紹介します。

  • 迫田久美子、佐々木藍子、細井陽子、須賀和香子「学習者コーパスを活用したモダリティ研究-日本語学習者の「かなと思う」の発達-」『データに基づく日本語のモダリティ研究』くろしお出版、pp.83-101

↑この本に収録されています。

 

3つの日本語学習者のコーパスを分析した結果、以下のようなことが分かったようです。

  • 「と思う」のほうが早い段階で使われるようになる。
  • 中級レベルでは「かな」単独で使われるほうが多い。
  • 「かなと思う」が安定して使用されるようになるのは、上級レベル以上になってから

要するに、「と思う」→「かな」→「かなと思う」という発達段階を経ているということですね。

また、「かなと思う」が安定して使えるようになるのは、上級レベル以上だそうです。

 

「かな」という表現自体が、日本語教育の教科書では、中級になってからでてくることがほとんどだと思います。

なので、主に教室で日本語を勉強している場合は、中級レベルにならないとそもそも「かな」が使えるようにならないとは思います。

 

また、言ってしまえば、「と思います」だけでも、自分の意見は十分に伝わります。

「かなと思う」という表現は、話題に関する人や他の意見への配慮を示したり、自分の意思・評価を控えめにする機能があると言われています(小野2006)。

「かなと思う」のような和らげ表現を使って、相手への配慮をしながら日本語を使えるのは、上級にならないと難しいのかもしれません。

(「かな」を中級で導入する際に、「かなと思う」もセットフレーズで教えるなどしたら、結果は変わってくるのかもしれませんが。)

 

なお、中国語話者・韓国語話者のロールプレイ2種類における「かなと思う」の使用を考察したところ、韓国語話者のほうが「かなと思う」を日本語能力が低いレベルから使用していたそうです。

韓国語で「かなと思う」に類似する表現があるので、母語の影響があるのかもしれないとのことでした(ただ、さらなる検証が必要とのことです)。

 

もっとご興味のある方は

この記事では、「日本語学習者にとって「~かなと思う」の習得は難しい?」というテーマで、日本語学習者の「かなと思う」の発達についての論文を紹介しました。

 

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