ある日本語学習者の日本滞在中の終助詞「ね」の習得に関するIshida (2009)の論文を読みました。

今回読んだ論文

今回は、以下の本に掲載されていたIshidaの論文を読んでみました。

  • Ishida, M. (2009). Development of interactional competence: Changes in the use of ne in L2 Japanese during study abroad. In Hanh thi Nguyen & Gabriele Kasper (Eds.), Talk-in-interaction: Multilingual perspectives (pp. 351–385). Honolulu, HI: National Foreign Language Resource Center.

 

この論文では会話分析を使って、Fred(仮名)という学習者の留学中の終助詞「ね」の習得を観察していました。

 

終助詞「ね」に関する先行研究について

先行研究では終助詞「ね」の習得については以下のように言われているそうです。

  • 第二言語学習者の終助詞「ね」の発達は第一言語の子供より遅い
  • 学習して1年目で返答のときに「そうですね」など使えるようになる。ただし、適切でない場面で使うことも多い。
  • その後、自分のことを話したり、相手の発話を評価・コメントするときについても「ね」が使えるようになる。聞き手と意見を共有していると想定したときに使われる、いわゆる同意の「ね」は頻繁に使われ、その使用も適切であることが多い。一方、聞き手が知らないであろと話し手が判断する情報をいうときのやわらげの「ね」は不適切に使用されることが多い。

この前、初級学習者の終助詞「ね」の習得についてSawyerの論文を紹介しましたので、興味がある方はこちらもご覧ください。

日本語学習者の終助詞「ね」の習得に関するSawyer (1992)の論文について①

 

Ishidaの研究

Ishidaの研究では、日本語学習者Fredの日本滞在中に、彼がホストファミリーや、日本チューター、友達などと話している会話を8回収集したそうです。

1回目と2回目は終助詞「ね」は使っていなかったそうで、3回目から5回目あたりに「ね」が1回~2回と出てくるようになり、その後、6回目で10回、7回目で22回、8回目で13回と急激に増加します。

 

この論文では、「ね」の頻度だけでなく、実際の会話を詳細に分析しながら、それぞれの「ね」の機能や、使用の適切さも検討していました。

 

Fredが使用する「ね」は、「そうですね」が多かったのですが、その使用は最初のほうは不適切なことも多かったようです。

その後、6回目~8回目になると、相手の発話に「遠いですね」とコメントするなど、「ね」を「そうですね」以外の場面でも使用できるようになっていきます。

また、相手の発話に応答するときに「ね」を使用するだけでなく、相手と違う意見をいうときなどにも使ったりとその使用の範囲が広がっていたそうです。