大学の言語教育で翻訳がどう受けとめられているかに関するKelly & Bruen (2014)を読みました。

少し前の記事で書きましたが(詳しくはこちら)、最近は言語教育での翻訳の復権の動きがあるようです。
日本語ではこのような本も出版されています。

  • ガイ・クック (2012) 「英語教育と「訳」の効用」(齋藤兆史・北和丈 (訳) )研究社

今回は、この翻訳の復権への動きの一環をなす論文だと思いますが、以下のものを読みました。

  • Kelly, N. and Bruen, J. (2014). Translation as a pedagogical tool in the foreign language classroom: A qualitative study of attitudes and behaviours. Language Teaching Research. 19(2) 150 –168

この論文では、アイルランドの大学で6名の日本語教師と6名のドイツ語教師に行ったインタビューと、学生による授業評価などをもとに、大学の言語教育で翻訳がどのように使われ、どう受けとめられているのかを調べていました。

結果としては、調査対象の現場の教師は翻訳を有益なクラス活動と肯定的に捉えていたそうです。実際に翻訳はクラス活動の一環として取り入れられており、試験などでも翻訳が課されていたそうです。学生からも翻訳の使用については肯定的な意見が聞かれたといっていました。

ただ、上記のようにクラス内で翻訳を使用し、試験でも翻訳が課されているものの、コース内容を記した書類には翻訳について明記されないコースも多かったようです。

Kelly and Bruen (2014, p. 165)は、Schjoldager (2003)を引用しつつ、翻訳については実践と理論の間で乖離があるといっていました。(主に英語圏の応用言語学の話だとは思いますが)つまり、教育現場や教育政策立案者は翻訳を有用だと思っているものの、理論家は翻訳について議論しないか、マイナスの評価している場合が多いと指摘していました。