翻訳学者のSchaffner(2009)の講演を視聴。翻訳は社会・政治的行為なのだと言っていました。

Christina Schaffnerの講演がアップされていたので見てみました。

  • Schaffner (2009) Hidden In Translation, Inaugural lecture, Languages & Social Sciences, Aston University

この講演では、首脳会談などの翻訳や書き起こし原稿、新聞記事などの例を挙げて、どのように情報が取捨選択されているかということをいろいろな例を挙げながら説明していました。

面白かった例は、ブッシュ大統領とメルケル首相の会談の書き起こし原稿です。文書だけ見ると、メルケル首相の言った言葉に、ブッシュ大統領がドイツ語で「Jawohl」(了解)と答え、あたかもブッシュ大統領が賛同しているかのように見えるのですが、実は、これはブッシュ大統領がメルケル首相にいったものではなく、そのときに詰まってしまった通訳者に対して、ドイツ語で声をかけた言葉だったそうです。

また、ブッシュ大統領は結構雑談したりジョークをいったりする人だったみたいですが、ドイツ政府の(翻訳)文書だと、首脳会談などの際の雑談などが全部消されていて、政治家がとてもまじめな人のように見えるらしいです。
こういったいろいろな例を出しながら、翻訳というのはただ原文に忠実かどうかという問題だけじゃなくて、社会・政治行為なんだと言っていました。

 

  • Chilton, Paul, and Christina Schäffner, eds. Politics as text and talk: analytic approaches to political discourse. Vol. 4. John Benjamins Publishing, 2002.